パニック障害は、突如として強い不安や恐怖を感じる発作を繰り返してしまう病気です。
パニック発作は、予期せぬタイミングで起こるため、冷静な精神状態に戻す対処法を自分自身で考えておく必要があります。
本記事では、パニック障害に関する基本的な情報と、発作時の対処法を紹介します。パニック発作が起きた際の対処法が知りたい方やパニック障害になりやすい人の特徴が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
パニック障害とは?
パニック障害は、突如として強い不安や恐怖を感じる発作を繰り返してしまう病気です。
パニック発作の症状として、心拍数の増加や呼吸困難、めまい、吐き気などが挙げられます。また、パニック発作後は疲労感や精神的な落ち込みを感じることが多いです。
パニック障害の治療には、薬物療法や精神療法が効果的ですが、普段の生活習慣の改善も重要となります。
パニック発作が起きやすい場所
パニック発作は、特定の場所や状況で起きやすいとされています。特に、下記の場所や状況が挙げられます。
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特に、人が密集している乗り物の中が危険です。電車や飛行機などは、すぐに降りたくても降りられない場合が多いため、パニック発作が起きた際の対応を事前に考えておく必要があるでしょう。
パニック障害になりやすい人
パニック障害は、誰にでも発症する可能性がありますが、下記の特徴がある人は、特に発症しやすいとされています。
- ストレスや不安を多く抱える人
- 過去に心的外傷を受けている人
- 家族にパニック障害の症状を持っている人
- 自己肯定感が低い人
- 完璧主義者
上記の特徴を持つ人は、特に注意しなければなりません。それぞれの特徴を確認していきます。
ストレスや不安を多く抱える人
日常生活の中で強いストレスや不安を感じることが多い人は、パニック障害になりやすい傾向があります。
仕事のプレッシャーや人間関係の問題などが長期的に続くと、心と体の負担が蓄積し、パニック発作につながることがあります。
また、ストレスや不安をうまく解消できずに抱え込む癖がある人は、症状が悪化しやすいため注意が必要です。
パニック障害に対する予防策として、日常的なストレスケアやリラクゼーションの方法を見つけることが重要です。
過去に心的外傷を受けている人
過去にトラウマとなるような体験をした人も、パニック障害になりやすいとされています。
例えば、事故や暴力、自然災害など、心に強いショックを受ける出来事が引き金となり、不安定な精神状態が続くことがあります。
こうした心的外傷は無意識のうちに心に影響を与え、ストレスに対する耐性を低下させる原因になります。
家族にパニック障害の症状を持っている人
家族にパニック障害を経験した人がいる場合、その影響で自分もパニック障害になりやすい傾向にあります。
パニック障害は遺伝的な要因が関係している可能性もあると考えられています。
また、家族間での似たような生活習慣も、症状の発症につながることがあるため注意が必要です。
自己肯定感が低い人
自己肯定感が低い人も、パニック障害を発症しやすい傾向があります。
自分に自信が持てず、他者との関係や自分の行動に常に不安を感じていると、心身に負担がかかり、パニック発作のリスクが高まります。
自己肯定感を高めるためには、小さな成功体験を積み重ねたり、自分を肯定するような言葉を意識的に使うことが効果的です。
そのほか、周囲からのサポートを受けることも重要です。
完璧主義者
完璧主義的な性格の人は、自分に高い目標を課し、ミスを恐れる傾向があるため、パニック障害のリスクが高いとされています。
完璧主義者は、他者からの評価を気にしすぎたり、自分自身へのプレッシャーを強く感じることで、精神的な余裕を失いがちです。
このような状況で長期間過ごすと、心と体にストレスが蓄積しパニック発作として表れる可能性が高まります。柔軟な考え方や息抜きの時間を持つことが大切です。
パニック障害の主な症状とその原因
パニック障害の発作には、以下の症状が現れます。以下の症状が出ている場合は、パニック障害の疑いがあるため、医療機関への受診が必要かもしれません。
- 激しい動悸や胸の痛み
- 息切れや呼吸困難
- めまいやふらつき
- 手足のしびれ
- 強い不安感や死の恐怖
それでは、見ていきましょう。
激しい動悸や胸の痛み
パニック障害の代表的な症状が、激しい動悸や胸の痛みです。
パニック発作中、心臓がドキドキと強く鼓動する感覚をともなう場合があり、不安を引き起こしやすくなります。
胸の痛みを感じる場合は、心臓に異常があるわけではなく、過度の緊張や不安が引き起こす身体的な反応である場合が多いです。
激しい動悸や胸の痛みが現れた際は、過度な心配を避けて深呼吸を行い、気持ちを落ち着けるようにしましょう。
息切れや呼吸困難
パニック発作では、息切れや呼吸困難が起こるケースもあります。
息切れや呼吸困難が起きると、交感神経が過剰に働いて呼吸が速く浅くなります。また、不安や恐怖が呼吸をさらに乱し、深い呼吸ができなくなるケースが多いです。
息切れや呼吸困難などのパニック発作が起こった場合は、ストレスのない環境に移動して深呼吸をするようにしましょう。
めまいやふらつき
パニック発作では、めまいやふらつきが生じる可能性があります。
めまいやふらつきは、血圧や血糖値の変動、過度の不安が引き起こす生理的な反応によって起きる症状です。また、パニック発作が進行する中で、急激に体が緊張することも原因として挙げられます。
症状が悪化した場合、頭がグラグラして立っているのが困難になる可能性もあります。
めまいやふらつきを感じた際は、無理に動こうとせず、静かに座ったり横になったりして体を休ませるようにしましょう。
手足のしびれ
パニック発作中は、手足のしびれを感じる場合があります。
手足のしびれは、パニック発作によって引き起こされる過剰な筋肉の緊張が原因です。パニック発作が始まると、身体がストレスに対処するために過剰に反応し、筋肉が緊張してしまいます。
しかし、手足のしびれは一時的であるため、パニック発作が収まるとともに少しずつ改善されます。
深呼吸をしたり、体を少しずつ動かしたりするなど、パニック発作中の対処法を自分で見つけておきましょう。
強い不安感や死の恐怖
パニック発作中は、強い不安や死の恐怖を感じる可能性があります。
重度のパニック発作では、突如として「自分が死ぬのではないか」などの強烈な不安や恐怖に襲われます。動悸や息切れ、胸の痛みなどの身体的な変化が死に対する恐怖を引き起こす原因です。
また、不安や恐怖を感じるパニック発作が頻繁に現れると、日常的に不安が増して、パニック発作が現れやすくなる悪循環に陥る可能性もあります。
そのため、パニック発作中は「死んでしまうわけではない」「今だけだから大丈夫」など、自分の気持ちを落ち着かせる考え方をするようにしましょう。
【自分自身での対処法3選】パニック発作が起こったときどうすればいい?
パニック発作が起きた場合は、できる限り冷静になれるような行動や気持ちを落ち着かせられる考え方をしてください。
具体的には、以下の方法で自分を落ち着かせてパニック発作を乗り越えましょう。
- 深呼吸をする
- 何か別のことを考える
- ストレスのない環境に移動する
それでは、詳しく解説します。
深呼吸をする
パニック発作が起きた際、すぐにできる対処法として深呼吸があります。パニック発作中に深呼吸を行うと、呼吸が整うため酸欠状態になるリスクを減らせます。
深呼吸を行う際は、まず鼻からゆっくりと息を吸い込み、肺が十分に膨らむのを感じながら3〜4秒間息を吸ってください。その後、ゆっくりと息を吐きながら6〜7秒かけて息を吐き出します。
呼吸のペースを意識的に遅くすれば、自律神経が落ち着くため精神状態を安定させられます。
深呼吸は、リラックス効果もあり、体の緊張を緩和できるためパニック発作中の不安や恐怖を軽減するために有効な手段です。
何か別のことを考える
パニック発作中は、突然起きるため、不安や恐怖で頭がいっぱいになります。
不安や恐怖は、パニック発作を悪化させる原因になるため、意識的に別のことを考えて精神状態をリラックスさせる必要があります。
例えば、自分が好きな場所や趣味を思い浮かべたり、周りの景色や建物に意識を集中させたりしてみましょう。
パニック発作中は、不安や恐怖を感じる原因になった事柄をできる限り忘れて、過度に未来の心配をしないようにしてください。
ストレスのない環境に移動する
パニック発作は、混雑した場所や密閉空間で起こる場合が多いです。
そのため、パニック発作を感じたときは、なるべくストレスの少ない場所に移動してください。例えば、人が少ない開放的な広場や自然に触れ合える公園など、自分がリラックスできる場所を事前に探しておきましょう。
新鮮な空気を吸って体をリフレッシュ状態に戻せば、冷静な自分を取り戻せる可能性が高いです。
パニック発作のリスクを軽減するためにも、できる限り混雑した場所や密閉空間を避けて生活するようにしましょう。
【周囲の人の対処法】パニック発作中の人にはどのような対応をするべきか
本章では、パニック発作中にしてあげるべきことと、してはならないことを解説します。
- パニック発作中にしてあげること
- パニック発作中にしてはならないこと
パニック発作中の人への対応が難しいと感じている人は、ぜひ参考にしてください。
パニック発作中にしてあげること
パニック発作中の人に対してしてあげるべき行動は、落ち着いて支援を行うことです。
パニック発作が始まったときは、相手を責めず安心させる言葉をかけるようにしましょう。
「大丈夫、あなたは安全ですよ」「不安を感じる必要はないですよ」など、穏やかで落ち着いた言葉をかけて、安心感を与えてあげてください。
また、パニック発作を起こした人がリラックスできるように、ストレスのない静かな環境に移動させることも効果的です。リラックスできる場所に移動したら、パニック発作が落ち着くまで、すぐそばにいてあげましょう。
パニック発作が起こった際は、相手のペースに合わせて行動をして、安心感を与えてあげるべきです。
パニック発作が起こっているにも関わらず、相手に我慢させたり、無理をさせたりしないように注意してください。
パニック発作中にしてはならないこと
パニック発作中の人に対して、してはならない行動がいくつかあります。まず「落ち着いて!」「気にしないで!」など、相手を急かすような言葉は避けましょう。
発作を起こしている人は、すでに不安や恐怖に圧倒されているため、急かされると不安がさらに強まる危険性があります。
また、パニック発作中に無理に話をさせたり、多くの指示を出したりしないようにしてください。
パニック発作が起きている場合は、冷静な精神状態ではないため、話を続けることや複数の指示を受けられない可能性が高いです。
さらに、手を握る、肩を抱くなどの身体的接触も、相手が不安に感じている場合は逆効果になる可能性があるため注意しましょう。相手の反応をよく見て、パニック発作が落ち着くまで、無理をせず見守ってあげてください。
パニック障害の治し方
パニック障害は、適切な治療を受ければ改善ができます。主な治療法には、以下の方法があります。
- 生活習慣の改善
- 薬物療法
- 精神療法
パニック障害の治し方を詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
生活習慣の改善
パニック障害を治すためには、生活習慣の改善が効果が期待できます。
まずは、規則正しい生活を送るようにしましょう。特に、睡眠の質を高めることを意識してください。質の高い十分な睡眠は、自律神経のバランスを整えて、精神的な安定を促進します。
また、食生活にも気を配る必要があります。カフェインやアルコール、甘いものを摂取しすぎると、不安を増加させる原因となるためできる限り控えるべきです。
さらに、定期的な運動も心身の健康を保つ大切な要素です。適度な運動は、ストレスを解消し、脳内のリラックス効果を高める神経伝達物質を分泌させます。
結論、生活習慣を整えると、パニック障害の予防や改善に大きな効果を発揮するでしょう。
薬物療法
薬物療法は、パニック障害の治療で重要な手段の1つです。
パニック発作が頻繁に起こる場合や、生活に支障をきたすほど症状が強い場合には、抗不安薬や抗うつ薬が処方されます。
代表的な薬には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などがあります。
抗不安薬は、パニック発作時の不安感や恐怖感を軽減する効果が期待できます。また、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)も、脳内の神経伝達物質のバランスを整える役割を果たしてくれるため、パニック発作を予防する効果が期待できます。
しかし、薬物療法は症状に応じた適切な薬を服用することが重要であるため、医療機関で診察を受けるようにしましょう。
精神療法
精神療法は、パニック障害の治療で効果があるとされています。
特に、認知行動療法(CBT)は、パニック発作の予防や症状の軽減に大きな効果があります。CBTは、パニック発作を引き起こす思考パターンを自己認識して、現実的な思考に置き換えることで、不安を引き起こさないようにする方法です。
精神療法は、パニック障害に対する根本的な治療として効果的であり、薬物療法と併用すると、さらに治療を促進できるでしょう。
パニック障害を治さずにいるとどうなる?
パニック障害を放置すると、症状が悪化する可能性が高くなります。
最初は発作が稀に起こる程度でも、治療を受けずにいると発作の頻度や強さが増して生活に支障をきたすようになります。
特に、パニック発作が予測できない状態が続くことで、外出を避けるようになり、引きこもってしまう可能性が高いです。
また、パニック障害の治療をせずにいるとうつ病や不安障害など、他の精神的な問題を引き起こす可能性もあります。
パニック障害の可能性がある場合は、早期に治療を受けて、早期に症状を軽減させるようにしましょう。パニック症状が軽度の場合でも、放置せず適切な治療を医療機関で受けてください。
【注意点】パニック障害の治療中に気をつけること
パニック障害の治療中には、いくつか注意点があります。
まず、治療を途中で中断しないことが重要です。薬物療法を受けている場合、効果を実感できるまでには時間がかかる場合があります。そのため、自己判断で途中で薬の服用をやめると、症状の悪化を招く危険性があります。
精神療法も同様に、継続的に受けることで効果が現れるため、途中で諦めずに続けることが大切です。
また、治療中は過度なストレスを避けるようにしましょう。パニック障害の治療中は、心身が敏感になりやすいため、無理をしてストレスを抱え込むと治療の妨げになってしまいます。
さらに、周囲の理解と支援を受けることも重要です。パニック障害は一人で抱え込むのではなく、家族や友人、専門家と協力して治療に取り組むことが治療効果を高めるポイントになるでしょう。
パニック発作が出ても冷静に対処しよう
本記事では、パニック障害の主な症状や対処法を詳しく解説しました。パニック発作が起きた際は、不安や恐怖を感じる事柄から離れて、冷静な精神状態を取り戻す必要があります。
パニック発作が起きたときの効果的な対処法としては、「深呼吸をする」「ストレスのない環境に移動する」などが挙げられます。
また、パニック発作中は周囲の人の対応も重要です。発作中の人を安心させる言葉をかけたり、そばで寄り添ってあげたりすると、精神的に安定しやすくなります。
パニック障害でお悩みの方は、ぜひ一度横浜よりそいメンタルクリニックにご相談ください。