身体や手足、指先などに生じるしびれは、自律神経失調症の兆候の一つです。ある日突然しびれが生じ、かかりつけの病院で検査しても原因が分からないときは、心の不調を疑ったほうがよいかもしれません。
本記事では、自律神経失調症になるとなぜしびれが起きるのかを分かりやすくまとめました。また、しびれの特徴や自律神経失調症以外の可能性、治し方のコツもお伝えします。
なお、身体のしびれに悩んでいる方や、自律神経失調症の疑いがある場合は、一刻も早く「よりそいメンタルクリニック」へご相談ください。悩みの原因を明らかにし、適切な治療を施して回復と再発防止を真摯にサポートします。
しびれは自律神経失調症のサイン
まず、自律神経失調症としびれの関連性について、以下2つに分けて確認していきましょう。
- 自律神経失調症だとしびれが生じる理由
- 自律神経失調症とは
以下で、それぞれ詳しく解説します。
自律神経失調症だとしびれが生じる理由
自律神経失調症になるとしびれが生じるのは、自律神経が正常に働かなくなることで、身体の機能が低下するためです。
自律神経は、全身の代謝や循環、内臓などに関わる機能をコントロールする役割を担っています。本来であれば交感神経と副交感神経が状況に応じて適宜機能することで、身体機能を適切な状態に保つ仕組みです。
しかし自律神経のバランスを崩すと、血流や筋肉などさまざまな器官が不調を起こし、うまく機能しません。
たとえば血流機能に異常が生じると、血行不良で身体が酸欠状態になったり、周辺の神経を圧迫したりして、それがしびれという形で発現します。
また自律神経失調症の影響で筋肉の動きに支障が生じる場合もあり、神経を圧迫し手足や身体にしびれが起こるケースもめずらしくありません。
くわえて、しびれが出たり消えたりするのを繰り返すのも、自律神経失調症の特徴です。緊張する状況・状態だとしびれが生じ、リラックスすると消えるなら、自律神経失調症の可能性が高いといえるでしょう。
自律神経失調症とは
そもそも自律神経失調症とは、感覚や機能を司る末梢神経である「交感神経」と「副交感神経」のバランスが乱れている状態です。
症状の種類・範囲や程度は人それぞれであり、主にストレスや疲労の蓄積を原因として発症します。
自律神経失調症になると、身体に多種多様な不調が生じますが、見極めるための明確な診断基準はありません。
しびれは自律神経の代表的な身体症状の一つであり、その他にも以下のように多岐に渡る慢性的な不調が現れます。
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また、しびれの原因が自律神経失調症の場合、そのまま時間の経過を待つだけでは改善は困難です。もちろん、気のせいや気の持ちよう、気分の問題でもありません。
自律神経失調症になりやすい気質や条件は存在するものの、心身の諸症状は心のSOSであり、誰にでも起こりうるものです。長く続く断続的なしびれに悩まされている場合は、精神科や心療内科の受診をおすすめします。
自律神経失調症によるしびれの種類
自律神経失調症のしびれには、大きく分けて次の3種類があります。
- 感覚低下
- 感覚異常
- 運動麻痺
以下で、それぞれのしびれの種類の特徴をみていきましょう。
感覚低下
感覚低下とは、しびれがあることで感覚が鈍くなり、触った感触が分かりづらくなる状態です。
身体や手指の感覚がないと、何をするにも実感が薄く、これまでできていた動作が困難になります。また、熱や痛みも感じにくくなるため、知らぬ間に大怪我をするかもしれないので注意が必要です。
感覚異常
感覚異常とは、何もしていないのに身体や手指の一部に違和感がある状態です。チクチク感やむずむず感、冷感など、しびれの感じ方は人によって異なります。
感覚異常が生じると、安静にしていても落ち着かず、イライラして余計にストレスが溜まりがちです。身体の違和感からついしびれのある部分をモゾモゾと動かしてしまい、周囲から奇異の目で見られることに悩んでいる方も少なくありません。
運動麻痺
運動麻痺とは、しびれが生じると手足に力が入らず、うまく動かせなくなる状態です。動作が思うようにいかないため、持とうとした物を取り落とすことが増えます。
また足に運動麻痺が出たときは、雲の上を歩くような感覚になり、歩行中につまずきやすいため、転倒に十分注意しなければなりません。
自律神経失調症以外のしびれの原因
身体や手足の指先などに生じるしびれは、自律神経失調症の特性ですが、必ずしもそうとは限りません。自律神経失調症のほか、次のような病気が隠れている場合もあります。
- 脊椎の疾患によるしびれ
- 脳神経・血管の障害によるしびれ
- 末梢神経によるしびれ
- ビタミン欠乏によるしびれ
- 身体の歪みや後遺症によるしびれ
- 女性特有の性質や習慣によるしびれ
以下では、上記6つのしびれに関連する病気と、症状の特徴を解説します。
脊椎の疾患によるしびれ
脊椎になんらかの疾患がある場合、身体にしびれが生じやすくなります。脊椎とは、背中側の首から、しっぽの名残である仙骨まで伸びた骨が連なった部位です。
しびれを生じさせる脊椎の疾患の具体例として、以下のような病気が挙げられます。
病名 | しびれる部位 | 症状 | 主な原因 |
椎間板ヘルニア | ・首(脊椎椎間板) ・腰(腰椎椎間板) | 椎間板が本来の位置から脱出し、神経を圧迫してしびれる | ・加齢 ・負荷 |
変形性頚椎症 | ・手 ・足 ・指先 | 頚椎の隆起が神経を圧迫してしびれる | ・加齢 ・負荷 |
頚椎後縦靭帯骨化症 | ・手 ・足 ・指先 ・首筋 ・肩 | 硬化した後縦靱帯が脊髄を圧迫し、その周辺の神経がしびれる | ・加齢 ・負荷 ・肥満 ・代謝異常 ・遺伝 |
軟骨組織である首の脊椎椎間板や腰の腰椎椎間板にヘルニアが生じて飛び出し、本来の位置からズレて周辺の神経を圧迫するとしびれが生じます。
首の頚椎の骨が隆起し、それが神経を圧迫することでしびれが出る変形性頚椎症では、歩行が困難になるケースも少なくありません。
また頚椎後縦靭帯骨化症とは、頚椎の内側にある後縦靱帯が硬くなり、その内部にある脊髄を圧迫している状態です。脊髄には多くの神経が集中しているため、圧迫されると身体のあらゆる部位にしびれが発生します。
脊椎の疾患は一旦発症すると完治しないものもあるため、早期の治療が早期の回復を左右するでしょう。
脳神経・血管の障害によるしびれ
脳の血管に機能障害が生じた場合、身体のさまざまな箇所に生じたしびれが初期症状として現れる場合があります。たとえば、次のような脳機能障害です。
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 三叉神経痛
脳梗塞や脳出血が起こると、身体の半分がしびれます。一旦治っても、一過性脳虚血発作と呼ばれる脳梗塞の前兆の可能性があるため油断できません。徐々にしびれが広がり、身体の感覚が鈍くなっていく場合は、脳梗塞を疑いましょう。
また、脳炎でも、身体のさまざまな部位にしびれやけいれんが現れます。一方、三叉神経痛では、耐え難いほどの顔面の激痛をともなうため、明らかに異常であることが分かりやすいです。
なお、脳神経や血管の障害によるしびれの場合、ろれつが回らなかったり、意識障害が出たりすることも特徴です。脳の病気は治療開始のスピードが予後を大きく左右するため、疑わしい症状がみられるときは、一刻も早く受診もしくは救急車を呼んだほうがよいでしょう。
末梢神経によるしびれ
末梢神経によるしびれは、自律神経失調症のほか、糖尿病に由来しているケースもあります。しびれは糖尿病の3代合併症の一つのため、持病がある方はしびれに注意してください。
なお、糖尿病によるしびれの正式名称は「糖尿病性神経障害」です。糖尿病で高血糖状態が長く続き、身体中の細い血管が動脈硬化を起こすことで、血液で各所へ運ぶはずの栄養が行き渡らなくなるためしびれが出ます。
末梢神経によるしびれの特徴は、足先を中心に、感覚鈍麻や冷感が生じ、運動機能に支障をきたす点です。症状が悪化すると足が壊死したり心血管の動脈硬化により心停止したりする恐れもあるため、予断を許さない状態だといえます。
ビタミン欠乏によるしびれ
ビタミンB群が欠乏すると、身体にしびれが生じる場合があります。不足の原因は、摂取不足と吸収障害の2種類です。
身体のしびれに関わるビタミン群として、以下が挙げられます。
- ビタミンB1
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- 葉酸
上記のうち、しびれと特に深い関係にあるのがB12です。ビタミンB12は赤血球の合成に関与しており、これが足りないと末梢神経に異常が生じ、しびれが出ます。
そのまま放置すると力が入らなくなったり、脊髄の変性を誘発したりする恐れがあるため、早急に不足したビタミンを摂取することが重要です。
また、アルコールは分解・代謝にビタミンBやCを消費するため、摂取量の多い方はしびれに注意しましょう。
身体の歪みや後遺症によるしびれ
悪い姿勢や本来の動きに反した動作を続けるうち、身体に大きな負担を与え、関節や筋肉が周囲の神経を圧迫してしびれが出ます。
特に仕事で長時間デスクワークに従事している方や、運動不足の場合は要注意です。慢性的な首や肩、腰への負担は血流を悪化させるほか、骨格の歪みから神経を圧迫してしびれにつながることもあるでしょう。
また、交通事故や怪我などによる身体へのダメージから神経が損傷し、結果としてしびれが生じるケースもあります。
女性特有の性質や習慣によるしびれ
女性に多い病気の主症状には、以下のようにしびれをともなうものも少なくありません。
たとえば、妊娠・出産や更年期など女性特有のライフイベントにともなうホルモンバランスの乱れは、以下のような疾患・症状を招きます。
疾患名 | しびれの特徴 |
手根管症候群 | 手首の手根管が正中神経を圧迫してしびれる |
更年期障害 | 女性ホルモン減少で自律神経のバランスが乱れて血流悪化および皮膚が薄くなり、しびれや痛みなどの刺激を感じやすくなる |
関節リウマチ | 免疫異常により正常な細胞を攻撃することで起こる関節を中心に痛みやしびれが出る |
また、しびれをともなう疾患・症状で、女性によくある生活習慣が原因となって発症するものは以下のとおりです。
疾患名 | しびれの特徴 |
モートン病 | 形の合わない靴を履き続けて外反母趾になり、足の指の神経が圧迫されてしびれが起こる |
更年期障害 | 女性ホルモン減少で自律神経のバランスが乱れ、血流悪化・皮膚が薄くなり、刺激を感じやすくなったてしびれる |
胸郭出口症候群 | 男性より肩の傾斜が緩やかな傾向にある女性が重い荷物を持つことで、肩甲骨周りの血管や神経が圧迫されてしびれが生じる |
女性特有のしびれは多種多様であり、専門知識がないと判別が難しいため、医師による慎重な判断が欠かせません。
自律神経失調症なによるしびれの治し方
自律神経失調症などによる身体や手足のしびれに悩まされている場合は、次のような方法で対処するとよいでしょう。
- 血行をよくする
- 筋肉の凝りをほぐす
- 姿勢を正す
- ストレスを溜めすぎない
- しびれが続く場合はすみやかに医療機関を受診する
上記5つの対処法について、以下で詳しく説明します。
血行をよくする
手足のしびれは、血行不良とそれにともなう神経の圧迫によるものも多い傾向にあります。冷えを防止し、血管や神経を圧迫する行為を極力避ければ、しびれが改善しやすくなるほか予防効果も期待できるでしょう。
最もシンプルな血行促進の方法は、身体を温めることです。
たとえば、上着や膝かけなどの防寒グッズを活用すれば、身体が温まり、冷えから守ってくれます。また湯船に浸かりつつ、温かいタオルや湯たんぽで首や腰などの大きな血管が通る関節を温めれば、血行促進効果が期待できます。
筋肉の凝りをほぐす
しびれは凝り固まった筋肉が原因となっているケースも多いため、それをほぐせば改善が見込めます。
揉む、さする、軽く叩くなど、さまざまな動作を組み合わせながら身体の冷えが気になる部分をマッサージし筋肉の緊張をほぐしましょう。
また、仕事や日常生活でじっとして作業する時間が長い方は、勤務中にもこまめに手や足を動かすよう心がけてください。あわせて、ストレッチやヨガなどで身体の柔軟性を高めると、筋肉がゆるみやすくなるほか、血行もよくなるので一石二鳥です。
ただし、原因やマッサージのやり方によっては逆効果になることもあるため、まずは原因を突き止めてから実践することをおすすめします。
姿勢を正す
身体のゆがみはしびれの元です。前屈みや猫背など身体に負担を与える姿勢は、骨格や骨盤のゆがませ神経を圧迫しやすくなるため、できる限り姿勢を正すよう心がけましょう。運動の時間が取れなくても、姿勢を正すだけなら気軽にチャレンジできます。
きれいな姿勢を保つポイントは、顎と肩を少し後ろへ引くことです。さらに、下腹部に軽く力を入れ、上体をしっかり起こしましょう。
最初のうちは、正しい姿勢をキープするのがきつく感じるかもしれません。しかし、正しい姿勢が無理なく保てるようになったころには、身体の歪みの改善も期待できます。
ストレスを溜めすぎない
自律神経失調症によるしびれの根本的な原因は、過剰に溜まったストレスです。日頃からストレスが溜まりすぎないようこまめに発散しておけば、しびれの大元となる自律神経失調症の改善および再発予防にも期待できます。
具体的には、自分が楽しい、心地よいと思うことを見つけて、ストレスをこまめに発散するとよいでしょう。趣味はもちろん、音楽鑑賞やアロマテラピー、入浴などリラクゼーション効果が期待できる方法でストレス発散するのもおすすめです。
また悩みがあるなら一人で抱え込まず、第三者に気持ちを話してみるだけで気持ちが軽くなります。
しびれが続く場合はすみやかに医療機関を受診する
自律神経失調症によるしびれを経験している多くの方が、専門の医療機関への受診で治ったきっかけをつかんでいます。セルフケアを試してもしびれが改善しない場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。
受診の目安となるのは、しびれが2週間以上続いているタイミングです。受診する病院はしびれが出ている部位の診療科でも構いませんが、自律神経や心の問題と関わっている可能性があるなら、精神科や心療内科を受診してください。
なお、精神科や心療内科では、自律神経失調症によるしびれがある場合は、以下3つの方法で改善へ向けてアプローチします。
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症状が軽い場合は、生活改善指導で心身ともに健康的に過ごせる環境を整えることで改善が期待できます。
また、医師やカウンセラーとのカウンセリングを通し、内面的な問題の自覚と理解を深め、必要に応じて認知の歪みを矯正します。
さらに、自律神経失調症によるしびれなどの症状が重度の場合は、薬物療法が必要なケースもあるでしょう。
自律神経の症状が一つではないように、適切な治療法も人それぞれ異なります。心の不調はよくなったり悪くなったりしながら少しずつよくなるため、主治医とじっくり話し合い、症状や悩みに応じて治療を継続することが大切です。
自律神経失調症のしびれは信頼できる主治医と一緒に乗り切ろう!
自律神経失調症になると、身体の各所の機能に異常が生じ、それがしびれとして現れることがよくあります。しびれの感じ方は鈍麻や違和感、機能不全など人それぞれですが、重度になると生活に支障をきたしかねません。
しびれは血行不良や筋肉のこわばり、身体の歪みをケアすることで緩和しやすくなります。しかし、ストレスを原因とする自律神経失笑症の身体症状としてしびれが起きている場合、根本的なこころの問題をケアしないことには、根本的な解決にはなりません。
しびれをはじめとし、自律神経失調症による不調に悩まされているなら、一刻も早い精神科や心療内科への受診が必要です。どの病院を受診すればよいか迷っている方は、ぜひ「よりそいメンタルクリニック」へお越しください。
当院では、自律神経失調症を原因とするしびれの改善と並行し、内面の問題にも医学的にアプローチしていきます。早期の治療開始でスムーズな改善が見込めますので、気になる症状があるときはすぐにご相談ください。