反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は、他者の権利や社会的ルールを軽視し、衝動的で攻撃的な行動を繰り返す人格障害の一つです。
周囲とのトラブルや対人関係の破綻を招きやすく、本人にとっても社会生活に大きな困難をもたらします。
特徴的な「口癖」や思考パターンを持つことも多く、それが対人関係の摩擦や孤立を深める要因となります。また、適切な治療や支援を受けられない場合、犯罪や社会的信用の失墜など厳しい「末路」に至るリスクも指摘されています。
しかし一方で、認知行動療法やスキーマ療法といった心理療法、薬物療法や社会的サポートを組み合わせることで、衝動性や攻撃性を和らげ、安定した生活を取り戻せる可能性もあります。
大切なのは「治し方」を理解し、本人と周囲が適切な対応を取ることです。
本記事では反社会性パーソナリティ障害の特徴・口癖・末路・治し方をわかりやすく整理し、家族や周囲が知っておくべき接し方や支援方法まで徹底解説します。
反社会性パーソナリティ障害とは?
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は、社会の規範や他者の権利を軽視し、衝動的・攻撃的な行動を繰り返す人格障害の一種です。診断は精神医学の国際的な基準であるDSM-5に基づき行われます。
多くの場合、少年期から問題行動が見られ、大人になってからも社会生活や人間関係に深刻な影響を及ぼすことが特徴です。
ここでは、その定義や診断基準、主な症状や行動パターン、そして他のパーソナリティ障害との違いについて解説します。
- 定義と診断基準(DSM-5に基づく特徴)
- 主な症状と行動パターン(衝動性・攻撃性・無責任さ)
- 他のパーソナリティ障害との違い
それぞれの詳細について確認していきます。
定義と診断基準(DSM-5に基づく特徴)
DSM-5における反社会性パーソナリティ障害の診断基準は、15歳以降に他人の権利を無視・侵害する行動が持続的に見られることとされています。
具体的には、繰り返し嘘をつく、詐欺行為を行う、衝動的で計画性がない、暴力的な行動をする、無責任で仕事や金銭管理を放棄する、他人を傷つけても罪悪感がない、といった特徴が挙げられます。
診断にはこれらの行動が18歳以降も継続していること、さらに15歳以前に「素行障害」が存在していたことが条件とされています。
単なる性格の偏りではなく、持続的・広範に現れる人格特性が診断の根拠になります。
主な症状と行動パターン(衝動性・攻撃性・無責任さ)
反社会性パーソナリティ障害の特徴的な行動パターンは、衝動性・攻撃性・無責任さに集約されます。
衝動的に行動しやすく、結果を考えずに暴力やトラブルに巻き込まれることが多いです。
また、他者に対する共感が乏しく、相手を操作したり利用することを平気で行う傾向があります。
金銭トラブルや無断欠勤、嘘やごまかしを繰り返し、家族や友人との信頼関係を失うことも珍しくありません。
社会的な責任感が弱く、借金や犯罪行為に発展するケースもあり、社会適応が難しいのが特徴です。本人に悪意の自覚がないことも多く、周囲の理解と対応が難しい障害といえます。
他のパーソナリティ障害との違い
反社会性パーソナリティ障害は、他のパーソナリティ障害と共通する部分もありますが、「他者の権利を侵害する行動を平然と繰り返す点」で明確に区別されます。
例えば、境界性パーソナリティ障害では感情の起伏や見捨てられ不安が中心ですが、反社会性では他者を利用したり加害する行動が顕著です。
また、自己愛性パーソナリティ障害は承認欲求の強さが特徴ですが、反社会性では他者の権利を顧みずに自己利益を優先する傾向が際立ちます。
このように反社会性パーソナリティ障害は「社会との摩擦」や「法的・倫理的問題」に直結する点で特異的であり、診断と対応には特別な配慮が必要です。
反社会性パーソナリティ障害の特徴
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は、日常的に社会規範を無視し、他者の権利を軽視する行動が繰り返されることが大きな特徴です。
表面的には魅力的で社交的に見える場合もありますが、内面では共感の欠如や無責任さ、衝動性が目立ちます。ここでは代表的な特徴を整理し、理解を深めていきます。
- 他者への共感の欠如
- 嘘やごまかしを多用する傾向
- 衝動的で攻撃的な行動
- 犯罪行為や規範違反に及ぶ可能性
それぞれの詳細について確認していきます。
他者への共感の欠如
反社会性パーソナリティ障害の人は、他者の感情や立場に共感する力が極めて乏しいという特徴があります。
例えば、人を傷つけるような言動をしても罪悪感を抱かず、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が欠けています。
これは単なる冷淡さではなく、相手の苦痛や恐怖を想像すること自体が難しい状態です。
そのため、人間関係において「利用するか、されるか」といった極端な価値観になりやすく、周囲との信頼関係を築くことが困難になります。
この共感の欠如は、社会生活や職場でのトラブルを引き起こす大きな要因となります。
嘘やごまかしを多用する傾向
反社会性パーソナリティ障害の人には、繰り返し嘘をついたり、ごまかしを日常的に行う傾向があります。
目的は自己利益のためであり、金銭・仕事・人間関係など様々な場面で相手をだますことが少なくありません。
嘘をつくことに罪悪感が薄いため、周囲からすると「なぜそんなことを平気で言えるのか」と感じることが多いです。
また、巧妙に人を操るために、表面的には魅力的な話し方や説得力を持つ場合もあります。
このような言動は信頼関係を崩壊させ、長期的には孤立やトラブルを招きやすい特徴となります。
衝動的で攻撃的な行動
反社会性パーソナリティ障害では、衝動的で攻撃的な行動がしばしば見られます。
感情のコントロールが難しく、怒りや不満を暴力的な形で表すことが少なくありません。
小さなきっかけで喧嘩やトラブルを起こしたり、衝動的に法を犯すような行為に走ることもあります。
この衝動性は本人にとっても不利益をもたらし、仕事の継続ができない、家庭生活が維持できないといった問題につながります。
結果的に、社会的信用の低下や孤立を招くリスクが高まります。
犯罪行為や規範違反に及ぶ可能性
反社会性パーソナリティ障害の最も深刻な特徴の一つが、犯罪行為や規範違反に及びやすいことです。
万引き、詐欺、暴力事件など、法的な問題を抱えるケースが少なくありません。
本人にとっては規範を破ることへの罪悪感が薄いため、周囲が驚くような行動を繰り返すことがあります。
もちろん全員が犯罪者になるわけではありませんが、反社会性の傾向が強いほどリスクは高まります。
このような行動は本人だけでなく家族や社会全体に大きな影響を及ぼすため、早期に理解し適切な対応をとることが重要です。
反社会性パーソナリティ障害に多い「口癖」
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)の人には、思考や価値観の偏りが言葉として表れることがあり、特有の「口癖」が見られることがあります。
こうした発言は周囲との摩擦やトラブルを引き起こす要因となり、本人の人間関係や社会生活にも悪影響を及ぼします。
ここでは代表的な口癖の傾向を整理し、その背景にある心理を解説します。
- 他責的な発言(「お前が悪い」「社会が悪い」)
- 自己正当化の言葉(「俺は間違っていない」「正しいのは俺だ」)
- 他人を見下す言葉(「あいつはバカだ」など)
- 無責任さを表す口癖(「知らない」「関係ない」)
それぞれの詳細について確認していきます。
他責的な発言(「お前が悪い」「社会が悪い」)
反社会性パーソナリティ障害の人は、問題が起きた際に自分の責任を認めず、他人や社会に責任を転嫁する傾向があります。
そのため「お前が悪い」「社会が悪い」といった口癖が頻繁に見られます。
自分の行動を省みることが少なく、責任を外部に押し付けることで自己正当化を図るのです。
このような発言は人間関係のトラブルを増やすだけでなく、職場や家庭でも信頼を失う原因になります。
根底には共感性の欠如と責任感の弱さがあり、問題を直視せずに回避する態度として表れているといえます。
自己正当化の言葉(「俺は間違っていない」「正しいのは俺だ」)
自分の行動を常に正当化する言葉も、反社会性パーソナリティ障害に特徴的です。
「俺は間違っていない」「正しいのは俺だ」という口癖は、他人の意見や価値観を受け入れられず、自分の立場を守るために使われます。
これは、内面的な不安や劣等感を隠すための防衛的な態度でもあります。
本人は自分の行為を合理化し、相手を論破することで優位に立とうとする傾向があります。
このような言動は議論や人間関係を悪化させ、孤立を深める原因になります。
適切な治療や支援がないと、自己正当化のパターンが固定化しやすくなります。
他人を見下す言葉(「あいつはバカだ」など)
反社会性パーソナリティ障害の人は、他人を見下す発言を繰り返す傾向があります。
「あいつはバカだ」「使えない」といった口癖は、他者への共感が乏しく、自分を優位に見せることで安心感を得ようとする心理の表れです。
周囲の人を軽視する発言は人間関係を破壊し、職場や家庭での孤立を招きやすくなります。
また、このような言葉は相手を傷つけるだけでなく、本人自身が社会的信用を失う要因にもなります。
他人を貶める言動は一時的には優越感をもたらしても、長期的には自分の立場を不利にする結果につながります。
無責任さを表す口癖(「知らない」「関係ない」)
無責任な態度を表す口癖も、反社会性パーソナリティ障害の典型です。「知らない」「関係ない」といった発言は、自分の責任を回避し、問題から逃れようとする姿勢を示しています。
仕事や家庭でのトラブルに直面した際にこのような言葉を繰り返すことで、周囲の信頼を失い、さらに孤立を深めてしまいます。
責任を果たさない姿勢は長期的に社会的信用を失う原因となり、本人の人生に大きな悪影響を与えます。
こうした無責任な口癖は、病理的な特性として根深く、改善には専門的な治療と支援が必要です。
反社会性パーソナリティ障害の「末路」とは?
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は、放置された場合に社会生活や人間関係に深刻な悪影響を及ぼします。
自己中心的な行動や無責任さは一時的に本人の利益につながることもありますが、長期的には孤立や信用の喪失、経済的困難など厳しい結果を招くケースが少なくありません。
ここでは代表的な「末路」と、その一方で治療によって改善できる可能性について解説します。
- 人間関係の破綻や孤立
- 犯罪やトラブルに巻き込まれるリスク
- 社会的信用の失墜(仕事・経済面の困難)
- 精神的リスク(薬物依存・うつ病・自殺の可能性)
- 適切な治療を受けた場合の改善例
それぞれの詳細について確認していきます。
人間関係の破綻や孤立
反社会性パーソナリティ障害の人は、自己中心的な言動や共感の欠如によって人間関係を築くのが難しくなります。
嘘や裏切り、暴力的な態度を繰り返すことで家族や友人から信頼を失い、最終的には孤立するケースが多いです。
人間関係の破綻は本人に孤独感をもたらすだけでなく、社会的なサポートを受けられない状況を招きます。
周囲が離れていくことにより、問題がさらに悪化しやすくなるのが特徴です。
このような孤立は生活基盤を脆弱にし、精神的にも大きな負担となります。
犯罪やトラブルに巻き込まれるリスク
反社会性パーソナリティ障害の行動パターンには、犯罪や法的トラブルに関わるリスクが含まれています。
万引きや詐欺、暴力行為などを繰り返すことで刑事事件に発展するケースも少なくありません。
また、反社会的な交友関係を持ちやすいため、トラブルや暴力事件に巻き込まれる可能性も高くなります。
本人は「悪いことをしている」という認識が乏しいことも多く、結果的に大きな社会的不利益を被ります。
犯罪歴は将来的な就職や社会復帰の妨げになり、生活再建を困難にします。
社会的信用の失墜(仕事・経済面の困難)
嘘やごまかし、無責任な態度は、社会的信用の失墜を招きます。仕事を継続できず転職を繰り返す、金銭トラブルや借金を抱えるといった経済的困難に直結します。
特に一度失った信用は取り戻すのが難しく、周囲から「信頼できない人」と見られることで新たな機会を得ることも困難になります。
経済的困窮は生活の不安定さを増し、さらに違法行為や依存行動に陥るリスクを高めます。
このように反社会性パーソナリティ障害を放置すると、生活基盤そのものが崩壊しやすいのです。
精神的リスク(薬物依存・うつ病・自殺の可能性)
反社会性パーソナリティ障害の末路として、精神的なリスクも見逃せません。衝動性や攻撃性を抑えるためにアルコールや薬物に依存し、結果的に依存症を併発するケースがあります。
また、孤立や社会的失敗の積み重ねによってうつ病を発症することも少なくありません。
最悪の場合、自暴自棄となり自傷や自殺に至るリスクもあります。
反社会的な行動が外向きに出るだけでなく、内面的な崩壊へと進む危険性もあるため、早期の介入と治療が不可欠です。
適切な治療を受けた場合の改善例
ただし、すべてがネガティブな末路に直結するわけではありません。
適切な治療と支援を受ければ改善の可能性は十分にあります。
認知行動療法やスキーマ療法などを通じて思考や行動パターンを修正し、薬物療法で衝動性や攻撃性を和らげることが可能です。
また、就労支援や家族の協力によって生活基盤を整え、社会適応を高めたケースもあります。
重要なのは「本人が治療を受ける意欲を持つこと」と「周囲が適切に関わること」です。
反社会性パーソナリティ障害は改善に時間がかかる病気ですが、治療次第で安定した生活を取り戻すことも可能です。
反社会性パーソナリティ障害の原因とリスク要因
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は、単一の原因で発症するのではなく、環境要因・遺伝的要因・社会的要因が複雑に絡み合って生じると考えられています。
幼少期の養育環境やトラウマ、脳機能の異常、そして社会的なストレスや不適切な人間関係がリスクを高めることが研究で示されています。ここでは代表的なリスク要因を解説します。
- 幼少期の虐待や家庭環境
- 遺伝的要因や脳機能の関与
- 社会的ストレス・不適切な人間関係
それぞれの詳細について確認していきます。
幼少期の虐待や家庭環境
反社会性パーソナリティ障害の背景には、幼少期の虐待や家庭環境の問題が深く関与していることが多いです。
身体的虐待・心理的虐待・ネグレクト(育児放棄)などの経験は、子どもの情緒発達や共感能力を阻害します。
また、親がアルコール依存や精神疾患を抱えている場合も、安定した愛着形成が困難となり、他者との信頼関係を築く力が弱まります。
家庭内で暴力や不和が日常化していると、攻撃性や規範を軽視する態度が身についてしまうことがあります。
幼少期の安全基地を失った経験は、反社会的な人格傾向の形成に強い影響を与えるリスク要因となります。
遺伝的要因や脳機能の関与
反社会性パーソナリティ障害には、遺伝的な影響や脳機能の関与があることも指摘されています。
特に前頭前野や扁桃体といった感情制御に関わる脳の働きが弱い場合、衝動性や攻撃性を抑えることが難しくなるとされています。
また、遺伝的に衝動性が高い傾向や、アルコール・薬物依存のリスクが高い家系では、反社会的な行動パターンが現れやすいことが報告されています。
もちろん遺伝が直接的に障害を決定するわけではありませんが、生まれ持った脳の特性が環境要因と結びついたとき、発症リスクが高まると考えられます。
社会的ストレス・不適切な人間関係
社会的なストレスや不適切な人間関係も反社会性パーソナリティ障害のリスクを高めます。
いじめや差別、過度な貧困や社会的排除といった経験は、自己肯定感を低下させ、攻撃的・防衛的な行動を強める原因となります。
また、非行グループや反社会的な仲間と過ごすことで、違法行為や規範違反が習慣化しやすくなります。
社会からの承認を得られない経験が積み重なると、「規範に従うことに意味がない」という認識を強めてしまうこともあります。
環境による悪循環が続くことで、反社会的な行動が固定化してしまうのです。
反社会性パーソナリティ障害の治し方・改善法
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)は改善が難しいとされますが、心理療法・薬物療法・社会的支援を組み合わせることで症状の安定や生活改善が期待できます。
衝動性や攻撃性を抑える治療と同時に、本人の行動パターンを修正し、社会との接点を取り戻す支援が欠かせません。ここでは代表的な治療法と周囲ができる支援を解説します。
- 心理療法(認知行動療法・スキーマ療法)
- 薬物療法(衝動性や攻撃性を抑える目的)
- 社会的支援(就労支援・地域支援)
- 家族や周囲ができる関わり方
それぞれの詳細について確認していきます。
心理療法(認知行動療法・スキーマ療法)
反社会性パーソナリティ障害の治療において中心となるのは心理療法です。
特に認知行動療法(CBT)は「衝動的な行動の背景にある思考パターン」を見直し、より適切な行動を選択できるように導く方法です。
また、幼少期の経験から形成された「自分は愛されない」「他人は敵である」といった根深い認知の歪みに焦点を当てるスキーマ療法も有効とされています。
これにより他者への攻撃性や自己中心的な思考を修正し、社会的に適応しやすい行動を学ぶことが可能になります。
心理療法は長期的な取り組みが必要ですが、改善の基盤を作る上で不可欠です。
薬物療法(衝動性や攻撃性を抑える目的)
反社会性パーソナリティ障害そのものを治す薬は存在しませんが、衝動性や攻撃性を抑える目的で薬物療法が行われることがあります。
抗精神病薬や気分安定薬が用いられ、イライラや攻撃的な行動をコントロールしやすくする効果が期待できます。
また、合併しやすいうつ病や不安障害がある場合には抗うつ薬も処方されることがあります。
薬物療法はあくまで症状の安定を補助する手段であり、心理療法や社会的支援と組み合わせて行うことが望ましいです。
適切な服薬管理は、トラブルを減らし社会生活を維持するための大切なサポートになります。
社会的支援(就労支援・地域支援)
反社会性パーソナリティ障害の改善には、社会的支援の活用も欠かせません。就労支援では本人が働きやすい環境を整え、社会との接点を持ち続けることができます。
地域支援や福祉サービスを利用することで、生活の安定や孤立の防止につながります。
また、自助グループやカウンセリングを通じて同じ課題を持つ人と交流することも、回復の大きな力になります。
社会的支援は本人だけでなく家族の負担を軽減する役割も果たし、持続的な生活の安定に寄与します。
孤立させず社会とのつながりを維持することが、改善に直結します。
家族や周囲ができる関わり方
治療を進めるうえで、家族や周囲の対応も非常に重要です。
反社会性パーソナリティ障害の人に巻き込まれすぎると、家族自身が疲弊してしまうため、適度な境界線を保ちながら支援することが大切です。
暴力や犯罪行為に対しては毅然と対応しつつ、治療や支援機関につなげるサポート役を担うのが望ましい姿勢です。
また、家族もカウンセリングや支援団体を利用して精神的な負担を軽減する必要があります。
「支える側も守られるべき存在」であることを理解し、無理をせず専門機関と連携することが改善につながります。
家族や周囲が注意すべき接し方
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)の人と関わる家族や周囲は、本人を理解し支える一方で過度に巻き込まれず、適切な距離を保つことが重要です。
支える側が疲弊してしまうと共倒れになり、本人への支援も継続できなくなります。ここでは家族や周囲が注意すべき接し方のポイントを解説します。
- 境界線を明確にする(過度に巻き込まれない)
- 暴力や犯罪行為には毅然とした対応をとる
- 専門機関・カウンセリングの利用
それぞれの詳細について確認していきます。
境界線を明確にする(過度に巻き込まれない)
家族は本人を支えたい一心で全てを抱え込んでしまいがちですが、これは共依存関係を生み、問題の長期化や悪化につながります。
本人の行動や問題をすべて肩代わりするのではなく、「ここからは本人の責任」という境界線を明確にすることが大切です。
例えば、金銭トラブルや嘘に振り回されないようにルールを定めたり、必要以上に感情的に巻き込まれないように意識します。
家族自身が心身の健康を守ることが、長期的に支援を続けるために欠かせません。
適度な距離感を持ちながら寄り添う姿勢が望ましい接し方です。
暴力や犯罪行為には毅然とした対応をとる
反社会性パーソナリティ障害の人が暴力や犯罪行為に及んだ場合、家族は感情的に流されず毅然と対応することが必要です。
例えば、暴力を振るわれたときに「家族だから我慢する」と考えてしまうと、事態はさらに悪化します。
必要であれば警察や医療機関に相談し、法的・社会的に適切な手段をとることが本人のためにもなります。
本人に「許される行為と許されない行為の境界」を明確に伝えることが、行動改善につながるケースもあります。
甘やかすのではなく、社会的ルールを守る重要性を理解させる姿勢が求められます。
専門機関・カウンセリングの利用
家族だけで反社会性パーソナリティ障害に対応するのは非常に困難です。
そのため専門機関やカウンセリングを積極的に活用することが推奨されます。
精神科や心療内科での診断・治療はもちろん、地域の精神保健福祉センターや家族会などの支援も役立ちます。
また、家族自身がカウンセリングを受けることでストレスを軽減し、適切な接し方を学ぶことができます。
「一人で抱え込まない」ことが鉄則であり、専門的なサポートを取り入れることで本人にも家族にも安心感が生まれます。
外部の力を借りることは決して弱さではなく、賢明な対応です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 反社会性パーソナリティ障害は治る病気ですか?
反社会性パーソナリティ障害は「完全に治る」というよりも、改善や安定を目指す病気と考えるのが適切です。
人格障害は性格の一部として長期間にわたり固定化しているため、短期間で劇的に治ることはほとんどありません。
しかし、認知行動療法やスキーマ療法などの心理療法、薬物療法を組み合わせることで、衝動性や攻撃性を和らげ、社会生活を安定させることは十分に可能です。
大切なのは「治す」という発想ではなく「うまく付き合いながら社会適応を高める」ことを目標とすることです。
Q2. 家族に反社会性パーソナリティ障害の人がいた場合どうすればいい?
家族に反社会性パーソナリティ障害の人がいる場合、一人で抱え込まず専門機関に相談することが重要です。
本人に対しては境界線を明確にし、暴力や違法行為があれば毅然と対応する必要があります。
また、家族自身もストレスや疲労をため込みやすいため、カウンセリングや家族会を利用してサポートを受けることが推奨されます。
家族が共依存的にならず、適切な距離感を保ちながら支援することが、本人の改善にもつながります。
周囲が無理をせず、専門家と連携することが何よりも大切です。
Q3. 犯罪者=反社会性パーソナリティ障害なのですか?
すべての犯罪者が反社会性パーソナリティ障害というわけではありません。
確かにこの障害を持つ人の中には犯罪行為に及ぶケースも多いですが、犯罪の背景は多様であり、経済的困窮や環境的要因なども大きく影響します。
逆に、反社会性パーソナリティ障害を抱えていても犯罪に関わらず生活している人もいます。
重要なのは「障害=犯罪者」と短絡的に結びつけないことです。
むしろ正しい理解を持ち、適切な治療や支援を受けられる体制を整えることが、再犯防止や社会適応につながります。
Q4. 口癖や態度で見分けることは可能ですか?
口癖や態度には反社会性パーソナリティ障害の特徴が表れやすいことは確かです。
例えば「お前が悪い」「社会が悪い」といった他責的な発言や、「俺は間違っていない」といった自己正当化の言葉は典型的です。
ただし、口癖だけで診断することはできません。診断にはDSM-5などの医学的基準に基づく専門的評価が必要であり、本人の生育歴や行動パターンを総合的に見て判断されます。
口癖はあくまで「傾向の一端」であり、専門家の診断に基づく理解が不可欠です。
Q5. 改善にはどれくらいの期間がかかりますか?
反社会性パーソナリティ障害の改善には数年単位の長期的な取り組みが必要です。
心理療法では思考や行動パターンを修正していくため時間がかかり、本人が治療に前向きであるかどうかも改善スピードに影響します。
薬物療法で衝動性を抑えることは可能ですが、それだけで根本的に変わるわけではありません。
社会的支援や家族の協力も含めた総合的なサポートが必要であり、段階的に少しずつ改善していくのが一般的です。
「短期間で治す」のではなく「長期的に安定させる」姿勢が大切です。
反社会性パーソナリティ障害は理解と支援が重要
反社会性パーソナリティ障害は、他者の権利を軽視し社会との摩擦を起こしやすい人格障害ですが、適切な治療と支援で改善や安定は十分に可能です。
放置すれば孤立や信用の失墜、犯罪や依存といった深刻な「末路」に至るリスクがありますが、早期に専門機関へ相談し、心理療法や社会的支援を受けることで人生を立て直すこともできます。
家族や周囲は「過度に巻き込まれず適切な距離を保ちながら支える」ことが大切です。
正しい理解と寄り添いが、本人の回復と社会適応を支える最も大きな力になります。