「うつ病の人には連絡しないほうがいい?」
「うつ病の方のLINEの特徴は?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
うつ病になると、多くの場合、言動に変化が生じます。文字でのやり取りを基本とするSNSにも、特徴的な症状が現れるケースが多く、うつ病のサインを見逃さないことが大切です。
そこで本記事では、うつ病患者に特有の行動パターンや表現をまとめました。接し方のポイントや、やり取りで悩んだときの対処法も解説しますので、ぜひチェックしてください。
なお、身近な方にうつ病の疑いがある際は、すぐに「よりそいメンタルクリニック」を受診するようお伝えください。うつ病は自覚のない方が多く、苦しい状態を長引かせないためには、早期の治療開始が肝心です。
うつ病患者には連絡しない方がいい?適度な関わりが大切な理由
うつ病の方と接する際には「連絡を取らない方がいいのでは」と考える人も多いかもしれません。
しかし、適度な関わりはうつ病を抱える人にとって非常に重要です。無理に距離を縮める必要はありませんが、相手に寄り添う言葉や態度は支えとなります。
以下では、適切な距離感でうつ病患者に接することの重要性について紹介します。
孤独感を和らげることができる
うつ病の大きな特徴の一つに、孤独感を感じやすいことがあります。連絡を一切断ってしまうと、相手は「誰にも必要とされていない」「一人で苦しむしかない」と感じ、症状が悪化する可能性があります。
適切に連絡を取り、相手に「気にかけている」「一人ではない」というメッセージを伝えることが重要です。
電話やメッセージだけでも、「心配している」という気持ちを示すことが、相手の不安や孤独感を和らげる力となります。
心のケアにつながり症状の回復が早まる
適度な関わりは、うつ病患者の心のケアにもつながります。特に、相手が感じている負担やプレッシャーを察して、心理的な支えになるような配慮をすることが重要です。
連絡の中で「どうしたの?」と詰め寄るのではなく、「何かあればいつでも話してね」という言葉がその人にとって救いになる場合もあります。
無理にではなく自然な形で支え続けることが、結果的に症状の回復を早める要因となります。
自傷行為や自殺を防げる
うつ病が進行すると、自傷行為や最悪の場合、自殺に至るリスクが高まることがあります。
こうした危険な状態を防ぐためには、事前に周囲が適度な接触を持ち、「あなたを大切に思っている」「見守っている」という意図を伝えることが大切です。
このような連絡が、相手に「自分は一人ではない」という希望を与え、最悪の選択を思いとどまるきっかけになる場合があります。支える姿勢を見せること自体が、命を救う行動につながるのです。
うつ病の人がLINE(ライン)でよくとる7つの行動
うつ病になっている方のLINE(ライン)には、次の7つのような特徴的な行動がみられます。
- 返事がなかなか返せない
- 誤字・脱字や送信ミスが増える
- 話が続かない
- 自分の話ばかりする
- 無理に明るく振る舞う
- 何が言いたいのか分からない
- 連絡が途絶える・ブロックされる
以下で、それぞれの行動の詳細と理由を確認していきましょう。
返事がなかなか返せない
うつ病になると、メッセージを確認したり、送り返したりなどのちょっとした行動すら難しくなるため、LINEの返信が遅くなる傾向にあります。
ラインに返信する行為は、まず相手から届いた内容を確認して理解し、適切な返事を間違わずに入力して送り返すという複数の動作が求められる作業です。正常な思考力や判断力を失っているうつ病の人にとっては極めて難解な作業であり、とてつもない労力を要します。
また、相手の反応が気になり過ぎ、どのように返せばよいか悩んでいるうちに返信が遅れてしまうケースもよくあるでしょう。
誤字・脱字や送信ミスが増える
注意力散漫になり、小さなミスを繰り返すようになるのもうつ病患者の特徴です。LINE(ライン)でやり取りする際も、メッセージ内に誤字・脱字が増えたり、誤送信したりすることを繰り返し、相手に違和感を与えるかもしれません。
一般的に、些細な誤字や脱字なら誰にでもあることです。しかし、以前にはなかったようなミスが明らかに目立つ場合は、うつ病の兆候の可能性があります。
話が続かない
うつ病になった方は、以前より口数が減り、LINE(ライン)などのSNSでもあまり話さなくなります。話を振っても無感情な印象で、どうにか会話しようにも曖昧な反応でやり過ごされてしまい、話が発展しません。
仮に返信がきても「はい」「いいえ」といったシンプルな返事のみになり、会話のキャッチボールが成立しないことが増えるでしょう。
自分の話ばかりする
うつ病になると、他者への興味・関心が薄くなるため、LINE(ライン)でも自分の話ばかりするようになりがちです。LINEのメッセージにも「私は」「自分としては」などの一人称が増え、相手の意見を聞かない傾向にあります。
相手が自分の話をしようにも、すぐに自分の話にすり替えてしまい、意思疎通がうまくいきません。
無理に明るく振る舞う
うつ病になりやすい方は、人を頼ったり、弱音を吐いたりすることが苦手です。そのため、つらい気持ちを誰にも相談できず、LINE(ライン)上でも元気であるように見せかけてしまいます。
しかし実際は、身体的・精神的な不調を抱えて悩んでいることが多く、無理に明るく振る舞う裏で見えないSOSを出しているのかもしれません。
何が言いたいのか分からない
うつ病を発症すると、考えがうまくまとまらず、とりとめもない内容や支離滅裂な発言を繰り返すようになる方もいます。
LINE(ライン)でも、メッセージの内容がめちゃくちゃで、話の意図がつかめません。結局なにが言いたいのかよく分からず、意思の疎通が困難になることも増えるでしょう。
連絡が途絶える・ブロックされる
うつ病になった方とは、そもそも連絡がつかなくなりがちです。コミュニケーションが億劫になったり、恐怖を感じたりするのはうつ病の代表的な症状の一つであり、LINE(ライン)でやり取りする機会も激減します。
これまで頻繁に連絡を取っていた相手が、急に音信不通になった場合は、うつ病を疑ったほうがよいかもしれません。
うつ病の人のLINE(ライン)に頻出する3つの言葉
うつ病を発症している方は、LINE(ライン)のメッセージで下記のような独特な言い回しを多用するようになります。
- 「〜すべき」「〜しなければならない」
- 「絶対に〜だ」「〜に違いない」
- ネガティブな表現
以下では、うつ病患者に上記3つの発現がなぜ増えるのかを説明します。
「〜すべき」「〜しなければならない」
うつ病になっている方とのLINE(ライン)では「〜すべき」「〜しなければならない」といったワードが頻出します。うつ病はもともと責任感が強い方がなりやすい傾向にあり、義務や至当性を表す言葉をよく使いますが、発症するとその傾向がより強まるためです。
くわえて、ある考えが強迫観念のようになって頭から離れず、自分だけではなく他者にもそれを要求するようになることもあるでしょう。
「絶対に〜だ」「〜に違いない」
「絶対に〜だ」「〜に違いない」などの断定の言葉は、うつ病の素因となる気質の一つでもある完璧主義者がよく使う表現です。何事も「全か無か」「0か100か」といった極端な思考パターンに陥りやすく、柔軟性に欠けます。
さらにうつ病の発症後は、視野がより狭くなり、極端な考えに固執しがちです。LINE(ライン)でのやり取りでも特定のことに限定するような言い回しが増え、他者の意見を受け入れられなくなってしまう傾向にあります。
ネガティブな表現
うつ病になると、LINE(ライン)のメッセージで使用する表現もネガティブに傾きます。たとえば、次のような言葉をよく使うようになった方がいたら要注意です。
- つらい
- 不幸だ
- 自分はだめな人間だ
- どうしようもない
- もうおしまいだ
- 絶望的だ
- もう楽になりたい
- いっそいなくなってしまいたい
悲観的・否定的な思考になるのは、うつ病による気分の落ち込みが原因です。家族や友人・知人とのやり取りの中でネガティブなワードが頻出するようになった場合は、医療機関への相談を勧めてみるとよいでしょう。
うつ病の人に送らないほうがいいLINE(ライン)
うつ病を発症もしくは治療中の方には、次のような内容のLINE(ライン)を送信してはいけません。
- 励まし
- 否定的な意見
- 叱責
- 助言
むやみに上記のメッセージを送ってしまうと、うつ病の症状が悪化する恐れがあります。以下で、なぜ送らないほうがよいのかをみていきましょう。
励まし
うつ病患者を元気づけようとする声かけは厳禁です。励ました本人は相手のためを思って言ったつもりでも、うつ病になっている人には大きなプレッシャーとなってしまいます。
そもそも、うつ病になるのは頑張り過ぎた結果です。そんな相手へさらに頑張るよう勧めるのは、酷な話だといえます。
たとえば「頑張れ」「大丈夫」などの言葉はLINE(ライン)でのやり取りでも気軽に使われる表現ですが、うつ病の人が相手のときは極力使用しないよう注意しましょう。
否定的な意見
うつ病の疑いがある方の言うことは、どのような内容でもむやみに否定しないでください。
うつ病患者は自己肯定感が低下しているケースが多く、自らの無価値感や絶望感に苛まれています。そのタイミングで発言を否認する言葉をかけると、追い討ちをかけてしまい、悪化の原因になりかねません。
たとえば「だめ」「NO」などの否定の言葉は、特定の行為や事象を指していても、自身を全否定されたように受け止められやすいためNGです。
その他、相手の言うことを最後まで聞かずに打ち消したり、認めずに自分の意見を押しつけたりするのもやめましょう。
叱責
うつ病の相手から送られてきたLINE(ライン)に、ミスや不注意、過失などがあっても責めないでください。細やかに注意を払えず失敗しやすくなるのは、本人の頑張りや気合いの問題ではなく、うつ病の特性です。
同じく、LINEで会話がうまく続かなくても、本人が悪意を持ってやっているわけではないことを理解してください。過ちや言動を叱責したところで、気分の落ち込みを加速させてしまうだけであり、なんの解決にもなりません。
うつ病の疑いのある方とのLINEで気になる言動があっても、病気の症状だと寛容に受け止めるとよいでしょう。そして、できないことより、できたことを見つけて認めてあげてください。
助言
LINE(ライン)でうつ病の方の話や悩み、不安を聞いていると、つい励ましたくなるかもしれませんが、それは控えましょう。うつ病になった場合、周囲からアドバイスされても、体調の問題から意志とは関係なく実行できないケースも少なくありません。
また、助言が問題解決につながらないばかりか、言われたとおりにできない自分を恥じて自己評価がさらに下がる恐れもあります。よかれと思ってアドバイスするほど逆効果になりかねないため、安易な助言はしないよう注意してください。
うつ病の人とのLINE(ライン)での正しい接し方
うつ病になった方およびその疑いのある相手とLINE(ライン)でやり取りする際は、次のことに配慮してください。
- 温かい言葉遣いを心がける
- 簡潔な内容にする
- 即レスを求めない
- 共感を示す
- まずは肯定する
- 真摯に向き合う
- ありのままを認める
- ほどよい距離感を保つ
以下で、上記8つの接し方のポイントを解説します。
温かい言葉遣いを心がける
LINE(ライン)といったテキスト中心でやり取りするツールは、意識的に配慮しないと相手にそっけない印象を与えがちです。温かい言葉遣いを心がけ、送る前に冷たい印象になっていないかどうかチェックするとよいでしょう。
とはいえ、難しく考える必要はありません。普段オフラインで会話する中で使っている言葉を基本とし、少し柔らかい表現に工夫してみてください。
簡潔な内容にする
うつ病になると、文章を読んだり理解したりすることが難しくなるため、送る内容は文字数を極力減らして簡潔にまとめましょう。
基本的には、ビジネスメールに用いられる基本マナーを心がければOKです。漢字の多用や難解な表現は避け、伝えたいことは箇条書きにするとよいでしょう。
また、句読点や行間を多めにすることで、文章が詰まった印象にならず、ぐっと読みやすくなるはずです。
即レスを求めない
返信を急かされるのは、うつ病の方にとって大きなプレッシャーです。早く返信しなければと思うほど心理的な負担が増し、余計に返信が遅くなってしまう恐れもあるため、無理に返信を求めるのは控えましょう。
返信が必要なメールを送るときは、急ぎの内容は極力避け、時間に余裕をもって送るようにしてください。
共感を示す
うつ病の相手と接するときは、自分の意見を押し付けるのではなく、相手の立場で考え共感することが大切です。専門用語では「共感的理解」といい、相手の気持ちを汲んで「辛かったね」「よく頑張ったね」と共感を示す言葉をかけることで、安心感を与えます。
また、共感の声かけは、相手の自信や自己肯定感を取り戻すためにも重要です。うつ病患者は見た目にはぼんやりしているように見えるかもしれませんが、さまざまな苦痛や葛藤に苛まれています。
身近な人からの共感や寄り添いは、うつ病の治療の助けにもなるので、LINE(ライン)でのやり取りでもぜひ実践してみてください。
ただし、過度な共感はわざとらしくなってしまい、相手に不信感を与えかねません。たとえば、相手が自らの気持ちや置かれている立場などをLINEで告げてきたときこそ、共感や寄り添いのベストなタイミングです。
まずは肯定する
うつ病の相手の発言はむやみに否定せず、まずは肯定してあげましょう。これを専門用語で「無条件の肯定的関心」といい、傾聴という手法の原則の一つです。
ひとまず肯定することで、相手に「受け入れてもらえた」「理解された」と感じさせ、安心感を与える効果が生まれます。
たとえ自分とは異なる意見でも、まずは共感して、なぜそのような考えに至ったのかの背景を探っていくことが必要です。
真摯に向き合う
うつ病の人とのLINE(ライン)では、特に真摯に接するよう心がけてください。真摯な態度は傾聴の3原則の一つである「自己一致」に該当し、自分・聞き手の双方の気持ちを大切にすることにつながります。
たとえば、分からないことがあったらうやむやにするのではなく、話を聞いた後に内容の正誤をきちんと確認するのが誠実な対応です。
真摯に向き合うことを徹底すれば、うつ病の方とのコミュニケーションが以前よりぐっとスムーズになるでしょう。
ありのままを認める
うつ病になっている状況も含め、相手のありのままを認めてあげるよう努めてください。
うつ病になると、自らに否定的な感情が生まれがちです。そんなとき、自己肯定感を高めるキーパーソンとなるのが自分を受け入れてくれる存在です。
身近な人から自分が認められる経験を積み重ねていくうちに、なくした自信を少しずつ取り戻し、うつ病からの回復にもつながるでしょう。
ほどよい距離感を保つ
うつ病の人を支えるといっても、すべて相手に合わせたり、常にコミュニケーションをとり続ける必要はありません。相手の反応に振り回され、自分のペースを乱してしまっては本末転倒です。
双方が心地よいと感じる距離感や連絡頻度を保ち、付かず離れずでサポートしてあげることが大切です。
うつ病の人とのLINE(ライン)に悩んだら?
うつ病になった方もしくはその疑いのある方とのLINE(ライン)のやり取りに関する悩み事は、精神科や心療内科などの専門の医療機関へ相談しましょう。
うつ病の人は、その時々の状態・状況や症状の段階、進行の度合いによって気分や体調、態度が大きく変わります。LINEでも悲しみ・怒りなどのネガティブな感情をぶつけられ、正しい対応が分からず、付き合っている方が参ってしまうこともめずらしくありません。
ときには、言いたいことがうまく伝わらなかったり、突然連絡がつかなくなったりして、心配になることもあるでしょう。
医師やカウンセラーなどメンタルヘルスの専門家に相談すれば、うつ病患者との適切な接し方やNG行為を分かりやすく教えてもらえます。また、患者を支える側の方の疲れたこころをケアしてもらうこともできるため、自らの体調管理にも効果的です。
精神科・心療内科などと聞くと、ハードルが高く感じるかもしれません。とはいえ最近は、Web予約の導入や待合室でのプライバシー対策など、より受診しやすくなるよう配慮されているので、ぜひ気軽に相談してください。
LINE(ライン)からうつ病の兆候を見抜いたら受診を勧めよう
うつ病の兆候は、LINE(ライン)でもやり取りにも現れます。以前と比べ返信・連絡の頻度が落ち、悲観的・否定的な表現や極端なこだわり、態度の変化などがみられる場合は、相手の方はうつ病かもしれません。
うつ病の方もしくはその疑いのある方とのLINEでやり取りする際は、無理に元気づけようとしたり、責めたりするのは厳禁です。温かく分かりやすい対応を心がけるとともに、折りをみて精神科や心療内科への受診を勧めてあげるとよいでしょう。
身近な方とのLINEに違和感があったときは「よりそいメンタルクリニック」にご相談ください。当院では、プライバシー保護を徹底し、どのような方でも受診しやすいよう配慮しています。
うつ病患者ご本人さまからの相談はもちろん、付き添いの方と一緒に受診することも可能です。ぜひ一度お気軽にご連絡ください。