適応障害の疑いがあっても、仕事や家庭の都合との兼ね合いから、長く休むのは難しい方も多いでしょう。「できれば1ヶ月程度で治ってほしい」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、適応障害から回復するまでにはある程度の期間を要するため、1ヶ月での寛解・完治は困難です。一時的に症状が治まったからといって、無理して復帰を早めると、あっという間に元の状態に逆戻りしてしまいます。
本記事では、うつ病が1ヶ月で治るのが難しい根拠と、休職期間の目安や回復の経過を踏まえて解説します。症状改善のコツもお伝えしますので、早期回復を目指したい方必見です。
なお、適応障害の疑いがある方は、「よりそいメンタルクリニック」へお越しください。治療期間が十分にとれない懸念がある方にも真摯に寄り添います。復帰に最善の道筋を、一緒に考えていきましょう。
適応障害が1ヶ月で治るのは難しい?休職期間の目安は?
結論として、適応障害の症状が軽度かつ初期のうちに治療を受ければ1ヶ月で症状が軽くなることはあっても、寛解・完治するケースはまれです。
一般的に、適応障害の治療には3〜6ヶ月かかるといわれています。ただし、適応障害の治療に必要な期間は、症状の範囲・程度や個人の気質、身体的・精神的な回復力などによって異なるため、一概にはいえません。
ストレスの原因から離れられなかったり、症状が重篤だったりすると、年単位での治療期間が必要となり、入院を要するケースもあります。
また「治る」の定義には、症状の緩和だけではなく、ストレス要因の軽減も含まれます。たとえ一時的に症状が治まっても、発症に至った認知の歪みやストレスとの付き合い方を改善しないことには、根本的な解決にはなりません。
したがって、適応障害を治して日常生活に復帰し、再発しないためには、焦らずゆっくり治療に当たることが大切です。
適応障害とは
そもそも、適応障害がどのような病気なのかご存じですか。以下では、適応障害に関する知識を、4つのカテゴリに分けて解説します。
- 適応障害の特性
- 適応障害の主症状
- 適応障害になりやすい気質および状況
- 適応障害の治療法
それぞれ詳しくみていきましょう。
適応障害の特性
適応障害とは、特定の物事にこころがうまく対応できないことから、精神的および身体的にさまざまな不調をきたす病気です。
原因は人によってさまざまですが、多くの場合、きっかけとなる特定のストレスが存在します。仕事や日常生活などで起きた心理的な負担にこころがうまく適応できず、それが精神的・身体的な不調につながるというのが通説です。
適応障害の主症状
適応障害では、次のような身体症状および精神症状が現れます。
【身体症状】
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【精神症状】
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上記の心身の症状は、ストレスにより脳神経の伝達に異常が生じ、自律神経が乱れることが原因だといわれています。
またストレッサーから離れると治まるのも適応障害の特徴であり、うつ病とは異なるポイントです。
適切な治療を受けないまま放置すると、症状が悪化してうつ病や双極性障害などのより重篤な精神疾患へと発展する恐れもあるため注意が必要です。
適応障害になりやすい気質および状況
適応障害には、その素因となる気質が存在します。具体的には、以下のような性格の方です。
- 繊細で敏感
- 自己肯定感が低い
- 自信がない
- 完璧主義
- 几帳面
上記の気質に該当する方は、ストレスへの耐性が低く、その分反応も大きくなりやすい傾向にあります。
また、家庭や職場で次のような環境に置かれている場合も要注意です。
- 身近な話し相手がいない
- 頼れる人がいない
- パワハラ・モラハラを受けている
上記のような状況は、心理的負担が大きく、どのような方でも適応障害になる可能性が他余ります。
なお、適応障害になりやすい方の特徴をさらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご参照ください。
適応障害の治療法
適応障害の治療には、主に薬物療法と精神療法が用いられるのが一般的です。
対症療法として薬が処方され、休養とあわせて身体的・精神的な不調を和らげます。表面的な症状を抑えつつ、適応障害の根本ともいえる心理面へのアプローチとして施されるのが精神療法です。
精神療法では、まず適応障害の直接の引き金となったストレッサーを特定します。過去に起きた複数の要因が複合的に関与しているケースも多いため、医師やカウンセラーとの対話を通してその背景を探っていくことが必要です。
さらに認知行動療法や対人関係療法などの訓練を行い、思考のクセを矯正します。訓練の中で他者との適切な接し方やストレスへの正しい対処法を身に付ければ、再発防止にも効果的です。
なお、治療を開始しても改善の兆しがまったくみえない場合は、ほかの病気が関与している可能性を考慮し、再検査が行われるケースもあります。
適応障害になっても仕事は続けられる?
適応障害になったからといって、必ずしも休職が必要なわけではありません。しかし、症状の程度によっては、休職が必要な場合もあります。
また適応障害は、発症のきっかけとなったストレッサーが近くにある限り、回復が困難です。そのため、発症の直接の原因が職務や職場の人間関係にあるなら、退職が余儀なくされるケースもあるでしょう。
適応障害を治すために休職する際の手順
一般的に、適応障害の治療のために休職する際は、以下の流れで手続きを進めます。
- 精神科・心療内科で医師の診断書をもらう
- 職場に休職を申し出る
- 福利厚生や支援制度の申請手続きを行う
上記3つの手順の詳細をみていきましょう。
精神科・心療内科で医師の診断書をもらう
適応障害で休職する場合、まず主治医に休職を希望する旨を相談し、診断書を発行してもらいましょう。病気の診断書は休職に関わる諸手続きに必要となるほか、職場や上司へ提示することで説明・理解もスムーズになります。
なお、医療機関によっては診断書の発行に数日〜1週間程度かかる場合があるため、休職を検討している場合は早めに相談するほうがよいでしょう。
職場に休職を申し出る
次に、現在の勤め先へ休職を申請します。申請の際は、はじめのステップで発行してもらった医師の診断書を添え、職場の上司や人事担当へ休職の意向とその期間を伝えます。
また、職場によっては、休職にあたって書類提出といった所定の手続きが必要になるため、指示を仰ぎましょう。くわえて、休職中の給与や福利厚生に関することも確認しておくと安心です。
福利厚生や支援制度の申請手続きを行う
続いて、休職中に受けられる福利厚生の手続きを進めます。なお、休職中に適用される可能性のある支援制度の具体例は、以下のとおりです。
制度の種類 | 適用条件 | 支援内容 |
傷病手当金 | 健康保険被保険者であり、一定の条件を満たす場合 | 病気・怪我で休職する際、給与額に応じて算出された手当金が支給される |
労災保険 | 企業や組織に勤務している場合 | 通勤・業務上の理由で病気・怪我をした際、賃金補償や治療費の一部を負担してもらえる |
自立支援医療 | 精神疾患・障害で継続的に治療を受ける場合 | 医療費の自己負担額が軽減する |
障害年金 | 年金保険料の納付要件を満たしている場合 | 休職期間中、所定の等級に応じた障害年金が支給される |
休職する際は、勤務先から給与が支給されないケースも多いため、経済的な不安があるなら支援制度を活用するとよいでしょう。
ただし、適用条件や支援の内容、申請手続きのやり方などが自治体によって異なる場合があります。利用を希望する際は、市区町村の障害福祉窓口に相談してみてください。
適応障害の治療開始から治るまでの3つの経過
適応障害の治療を開始したあとは、次の経過をたどります。
- 休養期:こころと身体をしっかりと休める時期
- リハビリ期:症状が回復し自己理解を深める時期
- 調整期:復帰に向けて環境を整える時期
以下で、各時期の特徴と治療のポイントを解説します。
休養期:こころと身体をしっかりと休める時期
適応障害の治療で大事なことは、医療機関の受診を継続しながら、心と体をしっかり休めることです。主治医の指示にしたがって服薬を続け、定期的に精神療法やカウンセリングを受けましょう。
また同居している家族がいる場合は、適応障害の治療には休養が不可欠であることをあらかじめ説明しておけば、誤解や行き違いが防げます。
ただ、適応障害はストレッサーから離れると症状が一時的に治る傾向にあるものの、自己判断で治療を止めてはいけません。医師の許可が下りる前に治療を中断してしまうと、再発して回復が遠のく恐れがあります。
なお適応障害は、ストレッサーと距離を置き、すみやかに適切な治療を施せば6ヶ月以内に改善するともいわれており、その期間が休職の目安です。休職期間中は、治療と休養に専念し、無理しないよう心がけてください。
リハビリ期:症状が回復し自己理解を深める時期
適応障害の治療と症状が落ち着き、主治医の許可が下りたら、社会復帰へ向けてリハビリを始める時期に入ります。
適応障害のリハビリがうまくいくコツは、焦らないことです。焦って無理をすると、状態に逆戻りしたり、悪化したりする可能性があります。
リハビリといっても、家事や通勤経路の再確認など、簡単にできることから始めればOKです。主治医やカウンセラーなどの専門家の意見を取り入れつつ、ちょっとした作業から少しずつ進めていきましょう。
調整期:復帰に向けて環境を整える時期
復職の目処が立ったら、社会復帰の計画を立てます。復帰・復職は個人の意向だけでは決められないため、職場へ相談し、主治医の意見も取り入れながら、無理のない道筋を考えましょう。
また復職にあたっては、職場の環境調整も必要です。具体例としては、適応障害の症状や原因に応じて配置転換を行ったり、時短勤務やリモートワークなど勤務時間・方法を変えたりするなどの調整が挙げられます。
なお復職の際、企業や通院している医療機関によっては「リワーク」といった支援制度が利用できる場合があります。リワークとは、専門機関もしくは企業・事象書で職業訓練を行いながら職場復帰を目指す復職サポート制度です。
利用を希望する際は、主治医や職場とよく話し合って決めてください。
適応障害の回復を早める過ごし方
適応障害の休職期間中、回復を少しでも早めたいと考えているなら、次の3つの行動を心がけましょう。
- 生活習慣を改善する
- これまでの仕事のやり方を見直す
- 気軽に相談できる相手を見つける
以下では、上記それぞれの詳細をみていきましょう。
生活習慣を改善する
適応障害には、脳機能や自律神経の働きが深く関与しているため生活習慣の改善が必要です。
もし在職中に不規則な毎日を送っていたなら、休職期間が生活習慣を整える絶好のチャンスとなります。また休職中は仕事や人目がないため、生活習慣が乱れやすくなりますが、それが体調悪化を招きかねません。
規則正しい生活は、ストレスに負けない健全な身体と精神を育みます。起床・就寝時間を決めて十分な睡眠を確保するとともに、ビタミン・ミネラル豊富な栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
また心身に余裕が出てきたら、軽い運動も取り入れるとなおよいでしょう。運動にチャレンジするなら、激しいスポーツではなく、ウォーキングやジョギング、ストレッチやヨガなど軽く汗ばむ程度の運動がおすすめです。
これまでの仕事のやり方を見直す
適応障害を発症した方は、これまでの仕事のやり方に無理があった可能性があります。休職中に自分の能力や体調に応じた無理のない働き方を模索することで、復帰後の円滑な業務進行が実現しやすくなるでしょう。
仕事を無理なく効率的に進めるには、タスクの細分化と、適度なペース配分が肝心です。職場や所属するチームのメンバーとの協力体制を見直し、オーバーワークにならない方法を考え、復帰前に提案してみてください。
また復帰後の勤務時間中は、定期的に適度な休憩を挟みながら働くことも大切です。あらかじめ自分に適したリフレッシュ方法を見つけておけば、こまめにストレスが解消できます。
くわえて、復帰後に心身の不調を感じたら、すみやかに関係機関に相談する必要があります。職場内外の相談窓口を把握しておき、いざというときにスムーズにつながれる態勢を整えておくとよいでしょう。
なお、職場の環境調整が難しい場合や、ストレッサーから離れるのがどうしても難しいときは、転職を検討するのも一つの手です。
自分がよりよく働ける新たな職場を見つけることで、適応障害の再発が防げるとともに、自らの実力を十分に発揮して活躍できる可能性も高まります。
気軽に相談できる相手を見つける
一般的に、休職中には普段より人との関わりが少なくなりがちです。ずっと一人で過ごしていると、孤独感や不安感を覚えやすくなるため、体調がよいときは誰か身近な人とコミュニケーションをとることをおすすめします。
ただし、緊張する相手と話すと逆効果です。身近な家族や、気軽に話せる友人・知人など、自分が楽に接しやすい人を探してみましょう
相談相手が見つからないなら、主治医や担当カウンセラー、精神保険福祉センターなどに相談してください。
そもそも、適応障害は一人で無理して頑張りすぎた結果です。一人で何とかしようとするのではなく、必要なときは遠慮なく誰かに頼りましょう。
適応障害が早く治るためには早期治療が肝心!
適応障害が治るまでには、原因や症状の程度によって異なりますが、平均3〜6ヶ月程度の治療期間が必要です。
回復の過程には症状の波があるため、仮に1ヶ月で症状が治まったとしても、一時的な改善に過ぎず、そこで無理すると逆戻りしてしまう恐れがあります。
したがって、適応障害で休職した際は、先のことを考えるのは後回しにして、まずはしっかりと休養と治療に専念しましょう。
回復を早めつつ再発を防ぐには、従来の生活習慣や仕事への取り組み方を改善するとともに、治療期間中から復帰後まで信頼できる相談相手を見つけることをおすすめします。
適応障害を少しでも早く治したいなら、すみやかに精神科や心療内科を受診してください。なお「よりそいメンタルクリニック」では、治療やカウンセリングを通し、早期回復を目指して全面的にサポートします。
診断書の即日発行にも対応していますので、お急ぎの場合もぜひお気軽にご相談ください。