MENU
当院はビル2階にございます。エレベーター1台につき時間がかかるため余裕を持ってのご来院をお願い致します。

AGA(男性型脱毛症)とは?

そもそも「AGA」とは一体何なのか、なぜ髪は薄くなってしまうのか。治療を考える上で、まずはその正体を知ることから始めましょう。ここでは、AGAの基本的なメカニズムや原因物質との関係など、今後の治療法を理解するための土台となる知識を分かりやすく解説します。

AGA(男性型脱毛症)とは男性ホルモン型脱毛症

AGAは “Androgenetic Alopecia” の略で、「男性ホルモン型脱毛症」を意味します。成人男性に最も多く見られる脱毛症のタイプで、遺伝的な要因と男性ホルモンの影響が複雑に絡み合って発症します。思春期以降に始まり、前頭部の生え際や頭頂部の髪が、時間をかけて徐々に薄くなっていくのが特徴です。進行性であるため、放置すると薄毛はゆっくりと、しかし確実に進行していきます。

AGAの定義とヘアサイクルへの影響

AGAの進行を理解する上で最も重要なキーワードが「毛髪のミニチュア化」です。これは、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちてしまう現象を指します。

私たちの髪には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、通常は以下のサイクルを繰り返します。

  • 成長期(2~6年): 髪が太く長く成長する期間。
  • 退行期(約2週間): 髪の成長が止まる期間。
  • 休止期(3~4ヶ月): 髪が抜け落ちるのを待つ期間。

AGAを発症すると、この成長期が数ヶ月~1年という極端に短い期間に短縮されてしまいます。その結果、髪は太く長く成長できず、細く、短く、色素の薄い「軟毛(うぶ毛)」へと置き換わっていきます。このミニチュア化が進むことで、地肌が透けて見えるようになります。

AGAの主な原因|なぜ髪が抜けるのか?

AGAによる脱毛のメカニズムは科学的にほぼ解明されており、その根底には「遺伝」と「男性ホルモン」という二つの大きな要因が存在します。

遺伝と男性ホルモンが二大要因

薄毛の原因の約8割は遺伝によるものとの報告もあり、AGAは遺伝的要因が非常に強い脱毛症です 。しかし、遺伝的素因があるだけでは発症しません。そこに「男性ホルモン」が作用することが、脱毛の引き金を引くための必須条件となります 。つまり、遺伝という「土壌」に、男性ホルモンという「種」が蒔かれることで、AGAという「芽」が出るのです。  

悪玉男性ホルモン「DHT」の生成メカニズム

AGAのメカニズムで主犯格とされるのが、**ジヒドロテストステロン(DHT)**という強力な男性ホルモンです。注意すべきは、男性らしさを形成する主要ホルモンであるテストステロン自体が、直接脱毛を引き起こすわけではないという点です 。  

脱毛のプロセスは以下の通りです。

  1. 男性ホルモン「テストステロン」が、毛根周辺に存在する還元酵素**「5αリダクターゼ」**と結合します 。  
  2. この結合により、テストステロンはより強力なDHTに変換されます。

この5αリダクターゼの活性度の高さは遺伝によって決まり、活性が高い人ほどDHTを生成しやすくなります。特にAGAに深く関わる「II型5αリダクターゼ」は、薄毛が進行しやすい前頭部や頭頂部に多く分布しています 。  

脱毛シグナルとその他の増悪因子

生成されたDHTは、毛乳頭細胞にある**「アンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)」**と結合します。この受容体の感受性(反応のしやすさ)も遺伝的に決まっており、感受性が高い人は、たとえDHTの量が少なくても強い影響を受けてしまいます 。  

DHTと受容体が結合すると、「髪の成長を止めろ」という強力な**脱毛シグナル(TGF-βなど)**が発せられます 。このシグナルが毛母細胞の増殖を抑制し、ヘアサイクルの成長期を強制的に終了させてしまうのです。  

これら遺伝とホルモンが根本原因である一方、ストレス、不規則な食生活、睡眠不足、喫煙といった生活習慣は、頭皮環境を悪化させ、AGAの進行を加速させる「増悪因子」となる可能性があります 。  

もしかしてAGA?初期症状と特徴

AGAは進行性のため、早期発見・早期対策が非常に重要です。症状が進行してから治療を始めるよりも、初期段階で介入する方が良好な結果を得やすくなります。

見逃したくない初期症状・特徴

AGAの初期症状は、抜け毛の量が急に増えるといった劇的な変化よりも、毛髪の「質」の変化として現れることが多いです。以下のサインに注意しましょう 。  

  • 毛質の変化: 髪全体のハリやコシがなくなり、スタイリングがしにくくなる。生え際や頭頂部に、細く短い産毛のような毛が混じり始める 。  
  • 抜け毛の増加と質の変化: 枕や排水口に付着する抜け毛が増える。抜け落ちた毛の毛根に、正常な毛に見られるような丸い膨らみ(毛球)がない、または非常に小さい 。  
  • 見た目の変化: 額が広くなったように感じる(特にM字部分)。頭頂部(つむじ周り)のボリュームが減り、地肌が透けて見える 。  

AGAの進行パターン「ハミルトン・ノーウッド分類」

AGAの進行度とパターンは、国際的に「ハミルトン・ノーウッド分類」という基準を用いて評価されます 。これは医師が客観的に重症度を判断し、治療方針を決定する際の重要な指標となります。主な進行パターンは以下の通りです。  

  • M字型: 額の両サイドから後退していくパターン 。  
  • O字型(頭頂部型): 頭頂部(つむじ)から円形に薄くなっていくパターン 。  
  • U字型(前頭部型): 生え際全体が後退していくパターン。M字型とO字型が進行・合体した状態も含まれます 。  

他の脱毛症との違い

男性の薄毛の9割以上はAGAですが、他の原因による脱毛症も存在します。自己判断は禁物ですが、代表的なものとの違いを知っておくことは有益です 。  

  • 円形脱毛症: 自己免疫疾患が原因で、突然、境界が明瞭な円形の脱毛斑が生じます 。  
  • 脂漏性脱毛症: 皮脂の過剰分泌による頭皮の炎症が原因で、ベタつきや湿ったフケを伴います 。  
  • 粃糠(ひこう)性脱毛症: 乾燥した細かいフケが大量に発生し、毛穴を塞ぐことで脱毛に至ります 。  

これらの脱毛症はAGAとは原因も治療法も異なるため、気になる症状があれば専門医の診断を受けることが重要です。

AGAの主な治療法

AGAは進行性の疾患ですが、幸いなことに科学的根拠に基づいた有効な治療法が確立されています。治療法を選択する上で最も信頼できる指標となるのが、日本皮膚科学会が策定した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」です。

科学的根拠に基づく「診療ガイドライン」

このガイドラインは、国内外の多数の臨床研究を精査し、各治療法の有効性と安全性を科学的根拠に基づいて評価したものです 。治療法ごとに推奨度がA(行うよう強く勧める)からD(行うべきではない)までのランク付けがされており、医師と患者が標準的で質の高い治療を選択するための道しるべとなります 。  

推奨度Aの薬物療法

薬物療法は、AGAの進行を止める「守りの治療」と、発毛を促す「攻めの治療」に大別されます。両者を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

  • 内服薬(守りの治療)
    • フィナステリド: II型5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を抑制します。ガイドラインで推奨度Aと最高評価を受けており、1年間の服用で98%の患者に薄毛の進行抑制または改善効果が認められています 。副作用として性機能関連の症状が報告されていますが、発生頻度は低いとされています 。  
    • デュタステリド: I型とII型の両方の5αリダクターゼを阻害するため、より強力にDHT生成を抑制します。同じく推奨度Aで、フィナステリドの約1.6倍の増毛効果があるという報告もあります 。  
  • 外用薬(攻めの治療)
    • ミノキシジル: 頭皮の血流を改善し、毛母細胞を直接活性化させることで発毛を促し、短縮された成長期を延長させます 。ガイドライン推奨度Aで、90%以上の使用者に何らかの改善効果が見られたというデータがあります 。主な副作用は塗布部位のかゆみやかぶれです 。  

推奨度Bの外科的治療「自毛植毛」

薬物療法で効果が不十分な場合や、既に毛髪が失われた部位に髪を取り戻したい場合に選択されるのが自毛植毛です。

  • 作用機序: AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部の毛髪を毛包ごと採取し、薄毛が気になる部位に移植する外科手術です 。  
  • 有効性: 移植された毛髪は元の性質を維持したまま、移植先で半永久的に生え続けます 。失われた部位に確実に毛髪を再生できる唯一の根本的な治療法として、ガイドラインでは推奨度B(行うよう勧める)とされています 。  
  • デメリット: 外科手術であるため、術後の腫れや痛み、一時的な周辺の脱毛(ショックロス)などのリスクがあります。また、治療費が高額で、効果が実感できるまで約1年を要します 。  

AGA治療の前に知っておきたいこと|クリニックの選び方

AGA治療は長期間にわたるため、治療開始前の心構えと、信頼できるクリニック選びが治療の成否を大きく左右します。

治療の心構え

  • AGAは「完治」ではなく「管理」する: 現在の医学ではAGAを完治させることはできません。治療の目的は、症状の進行をコントロールし、良好な状態を「管理」することです 。  
  • 治療の継続が不可欠: 薬の効果は使用を継続している間のみ持続します。自己判断で治療を中断すれば、AGAは再び進行し始め、治療前の状態に戻ってしまいます 。  
  • 効果発現には時間が必要: 見た目に明らかな改善が認められるまでには、最低でも6ヶ月から1年間の継続的な治療が必要です 。焦らずじっくり取り組む姿勢が大切です。  

信頼できるクリニック選びの5つのポイント

AGA治療は自由診療であり、クリニックによって質や費用が大きく異なります。以下の5つのポイントを基準に、慎重にクリニックを選びましょう。

  1. 医師の専門性と実績: AGA治療を専門とする医師(皮膚科専門医など)が在籍しているか、豊富な治療実績や症例を公開しているかを確認しましょう。実績は多様な症状に対応できる信頼性の指標となります 。  
  2. 治療選択肢の多様性: 患者一人ひとりの症状や希望に応じて、内服薬、外用薬、注入治療など、複数の治療選択肢を提示し、最適な治療計画を一緒に考えてくれるクリニックを選びましょう 。  
  3. 料金体系の透明性: 治療薬代、診察料、検査料などを含んだ総額費用がウェブサイトなどで明瞭に提示されているかを確認します。追加料金の有無も事前に確認することが重要です 。  
  4. カウンセリングの質: 治療法の効果や副作用、費用について、患者が納得するまで丁寧に説明してくれるか、質問しやすい雰囲気かを見極めましょう。メリットだけでなく、リスクについても正直に説明してくれるクリニックは信頼できます 。  
  5. 通院のしやすさ: 長期的な通院が必要になるため、自宅や職場から通いやすい立地であることや、診療時間がライフスタイルに合っていることも治療継続の重要な要素です。オンライン診療に対応しているかも確認すると良いでしょう 。  
関連記事一覧

日常生活でできるAGAの予防と対策

生活習慣の改善だけでAGAを完治させることはできませんが、頭皮環境を整え、髪の成長をサポートすることは、専門的な治療の効果を最大限に引き出すための重要な土台となります 。  

髪の材料を補給する「食事」

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質でできています。健康な髪を育むためには、その材料となる栄養素をバランス良く摂取することが不可欠です 。  

  • タンパク質: 髪の主成分。肉、魚、卵、大豆製品などを積極的に摂取しましょう 。  
  • 亜鉛: ケラチンの合成を助ける必須ミネラル。牡蠣、レバー、牛肉などに豊富です 。  
  • ビタミンB群: 頭皮の健康維持に重要。レバー、卵、ナッツ類、葉物野菜などに含まれます 。  

髪を育てる「睡眠」

質の高い睡眠中に分泌される「成長ホルモン」は、毛母細胞の分裂や頭皮の修復を促すため、髪の成長に極めて重要です 。毎日同じ時間に就寝・起床する、就寝前にスマートフォンやPCの使用を控えるなど、睡眠の質を高める工夫を心がけましょう 。  

頭皮環境を守る「ストレス管理」と「生活習慣」

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を招きます。これにより、毛根への栄養供給が阻害されてしまいます 。ウォーキングなどの適度な運動や、趣味に没頭する時間を持つなど、自分なりの方法でストレスを管理することが大切です 。また、喫煙は血管を収縮させて頭皮の血行を著しく悪化させるため、禁煙を心がけましょう 。  

AGAに関するよくある質問

Q1. AGA治療に健康保険は適用されますか?

A. いいえ、原則として適用されません。AGA治療は容姿の改善を目的とした「美容医療」に分類されるため、全額自己負担の「自由診療」となります 。  

Q2. 治療効果はどのくらいの期間で実感できますか?

A. 一般的に、目に見える効果を実感するまでには6ヶ月から1年程度の継続が必要です。治療開始後1~3ヶ月は、ヘアサイクルが正常化する過程で一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがありますが、これは治療が順調に進んでいる証拠です 。  

Q3. AGAは完治しますか?治療はいつまで続ける必要がありますか?

A. 現在の医学ではAGAを「完治」させることはできません。進行性の体質であり、改善した状態を維持するためには、ご自身が薄毛を気にしなくなるまで治療を継続する必要があります 。  

Q4. 治療を途中でやめるとどうなりますか?

A. 薬によって抑えられていたAGAの進行が再開し、数ヶ月から1年ほどかけて治療前の状態に戻るか、さらに進行してしまいます 。  

Q5. 市販の育毛剤とクリニックの治療薬はどう違いますか?

A. 法的な分類、目的、含有成分が根本的に異なります。市販の「育毛剤」の多くは、頭皮環境を整え、今ある髪を健康に保つ「抜け毛予防」を目的とした医薬部外品です。一方、クリニックで処方される「治療薬」は、AGAの進行を止め、新たな髪を生やす「治療・発毛」を目的とした医薬品であり、医師の処方が必要です 。

Q6. 治療薬の副作用が心配です。

A. 副作用の可能性はありますが、頻度は低く、対処法も確立されています。内服薬では性機能関連の症状、外用薬では頭皮のかゆみなどが報告されています 。最も重要なのは、副作用が疑われる症状が現れた場合、自己判断で服用を中止せず、速やかに処方を受けた医師に相談することです。医師が症状を判断し、薬の減量や変更など、最も安全で適切な対処法を提案します 。