「自律神経失調症だとどれくらいのレベルで入院になる?」
「かかる負担はどの程度だろう」
このような悩みや不安感を抱えていませんか。
結論、自律神経失調症で入院するケースは稀です。通院治療を基本とし、生活改善やカウンセリング、必要に応じて内服を併用することとなります。
ただし、症状が著しく重度の場合は、別の心疾患との関連性も考慮し、入院治療がすすめられるケースもあるでしょう。
本記事では、自律神経失調症で入院が必要だと判断される目安と、どのような措置・治療が行われるのかを解説します。
なお「よりそいメンタルクリニック」では通院での医療を提供しています。土日診察にも対応していますので、ぜひ一度ご相談ください。
自律神経失調症は入院レベルの症状?
基本的に、自律神経失調症はすみやかに適切な治療を始めれば通院で完治が目指せるため、入院が必要なレベルの症状ではありません。
しかし、自律神経失調症の症状が悪化すると、日常生活や仕事にも支障をきたし、場合によっては入院が必要になることもあるでしょう。
そもそも自律神経失調症とは、疲労やストレス、ホルモンバランスの変化など、ちょっとしたきっかけで誰でもなる可能性のある身近な症状です。
疲労やストレスが蓄積すると、自律神経を構成する交感神経と副交感神経のバランスが乱れます。
身体の末梢神経である自律神経が正常に働かず、心身のさまざまな部位に継続的な不調が生じるのが発症のメカニズムです。
自律神経失調症の入院レベルかどうかを診断する目安となる症状
自律神経失調症で入院治療が必要かどうかの判断は、以下5つのポイントが判断の目安となります。
- 本人の生命維持に危険が生じているとき
- 日常生活に支障をきたすとき
- 周囲を脅かす可能性が高いとき
- 複数の症状がいっぺんに発現しているとき
- 自宅では環境調整が困難なとき
以下で、それぞれの詳細をみていきましょう。
本人の生命維持に危険が生じているとき
自律神経失調症で継続的かつ重度の倦怠感があり、睡眠や食事をとるのが難しいほど症状が重い場合は、入院がすすめられる場合があります。
生命維持に必要な活動に支障があるほど強い倦怠感が続く場合、睡眠や食事といった生活の基本動作すらできなくなります。
次第にどんどん衰弱し、取り返しがつかないほど悪化する恐れも否めません。
特に、身近に本人をサポートしてくれる存在もおらず、1日の大半を寝たきり状態で過ごすようなケースでは、通院治療だと危険性が高いと判断されるでしょう。
日常生活に支障をきたすとき
症状の程度が日常生活に支障をきたすほど重いときは、入院が必要だと判断される場合があります。
通常、自律神経失調症の症状は一過性で、症状がひどいときを除き家事や仕事が問題なくできるケースが大半です。しかし、症状が起きるタイミングを見極めるのが難しく、頻繁に起きる可能性も高いときは、本人の希望も踏まえて入院が考慮されるでしょう。
また、起床時の血圧の乱高下や心拍数の急増がしばしば起こる場合は、重度の起立性調節障害(OD)かもしれません。
周囲を脅かす可能性が高いとき
自律神経失調症で自らの感情や言動の制御がきかず、それを自分や周囲にぶつけてしまうようなケースでは、入院が措置される場合があります。
身体やこころのコントロールを失った状態では、スムーズに社会生活を送るのは困難です。感情の爆発で重大なトラブルに発展する恐れもあるため、その兆候があるときは入院治療を提案することがあります。
複数の症状が見られる時
自律神経失調症になると、複数の症状がいっぺんに発現し始めるケースもありますが、これは悪化のサインです。
心身にたくさんの不調を抱えたまま放置すると、うつ病などのより重篤な精神疾患・障害の発症も懸念されるため、入院治療となる場合があります。
自宅では環境調整が困難なとき
自宅にいるままではストレスと距離を置けない場合は、入院治療が判断される場合があります。
自律神経失調症の治療には、安静にできる状況が不可欠です。外部刺激をシャットアウトする必要がありますが、人によっては調整が困難なケースもあるでしょう。
自律神経失調症を患っている方にはあらゆることがストレスになりかねないため、外部刺激が多い環境にいるとその分回復が遠のきがちです。
一旦入院して物理的に刺激から遠ざけ、症状がある程度改善してから通院治療に切り替える必要があるでしょう。
自律神経失調症における入院の種類
精神医療の分野における入院には、次の4種類があります。
- 入院措置
- 医療保護入院
- 応急入院
- 措置入院
以下で詳しく確認しておきましょう。
任意入院
患者本人が入院に同意しており、医師も必要だと判断した場合は、任意入院となります。精神保健福祉法第20条に定められる制度であり、一般的に自律神経失調症で入院する場合はこの任意入院となるケースが多いです。
なお任意入院は、本格的な治療というより軽いストレスケアのような位置付けであり、退院のタイミングも医師の判断および本人の希望によります。
医療保護入院
医療保護入院とは、精神障害で医師が入院の必要があると判断し、本人もしくはその家族の同意がある場合の措置です。
精神保健福祉法第33条に規定される制度であり、連絡のとれる家族などがいない場合、市町村長の権限で本人の意思にかかわらず入院が許可されます。
応急入院
精神障害により入院を医師が必要だと判断したものの、本人およびその家族の同意が得られない場合は、応急入院が措置されます。なお応急入院は、精神福祉保健法第33条の7に規定される精神医療制度です。
一定の基準を満たす応急入院指定病院へ、72時間以内の範囲で、医師の判断により入院することとなります。とはいえ、自律神経失調症で応急入院になるケースさほとんどありません。
参考文献:日本精神科病院協会「精神科医療ガイド」
措置入院
精神障害の症状により、自身および他者に危害を加える恐れがあったり、警察や関係機関などから通報があったりした場合は措置入院が指示されます。精神保健福祉法第29条に基づき、2名以上の精神保健指定医の判断の下、都道府県知事の命令で行われる制度です。
なお、夜間などの受け入れ体制が手薄となる時間帯や、入院が必須となる緊急性の極めて高いケースでは「緊急措置入院」になる可能性があります。緊急措置入院の入院期間は72時間限定です。
参考文献:日本精神科病院協会「精神科医療ガイド」
入院レベルの自律神経失調症と似た症状・疾患
入院レベルの自律神経失調症には、以下3つのよく似た症状がみられることがあります。
- うつ病
- 心身症
- 自己免疫疾患
上記と自律神経失調症はまったく異なる位置付けですが、見極めが困難なため、正確な判断のためにも医療機関への受診が必要です。
以下で、各症状・疾患の詳細と自律神経失調症との違いを確認していきましょう。
うつ病
うつ病とは、過剰なストレスの蓄積により脳が疲弊し、神経伝達に異常をきたす精神疾患です。一般的に、身体症状・精神症状ともに通常レベルの自律神経失調症より重い傾向にあります。
ただ、入院レベルにまで悪化した自律神経失調症は、うつ病と紙一重です。また、通常のうつ病のほか、仮面うつ病なども存在します。
なお仮面うつ病では主に身体症状が表面化し、精神的な不調が目に見えにくいため、自律神経失調症と誤って診断されることも少なくありません。
心身症
心身症とは、家庭や仕事などにおける過剰なストレスが原因で、身体のいずれかの部位に異常が生じる症状です。
自律神経失調症と心身症の違いは、不調のある部位に目に見える病気や障害が存在するかどうかにあります。自律神経失調症は身体的な異常はみられないのに対し、心身症では実際に該当部位およびその機能になんらかの異常が生じています。
その他、心身症にはさまざまな症状があります。自律神経失調症と同様、必ずしも入院治療を必要としませんが、症状の程度に応じて考慮されることもあるでしょう。
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、本来なら悪性の細胞やウイルスなどから身体を守るはずの免疫系が、正常に働かなくなる病気です。
自身のいずれかの部位の細胞を異物と誤認して攻撃を始めるため、身体の内部で炎症が起こることで、さまざまな不調が生じます。
自律神経失調症と似ている自己免疫疾患の代表例は、バセドウ病と橋本病です。両者はいずれも甲状腺の機能の異常を原因として発症します。
なお、バセドウ病の病態は、甲状腺機能の異常な増進です。代謝機能が上昇しすぎ、発汗や動悸、体重減少などの症状に悩まされます。
反対に、甲状腺ホルモンが少なくなるのが橋本病です。身体の代謝が下がり、倦怠感や無気力感が常態化したり、食べていないのに体重が増加したりするなど全体的に身体の機能が低下します。
自律神経失調症の入院中に施される治療法
自律神経失調症で入院した際は、期間中に以下のような治療が施されます。
- 休養・栄養摂取と生活指導
- 薬物療法
- 精神療法
上記3つの治療法の詳細を説明します。
休養・栄養摂取と生活指導
入院後は、まずは規則正しいリズムで生活し、質のよい睡眠をとりやすい習慣に整えることを徹底します。
不規則な生活やそれにともなう睡眠不足および栄養失調は、自律神経失調症の悪化を招くため、治療の際は休養と生活改善が不可欠です。
ただし、入院中のみ規則正しい生活を送っていても、自律神経失調症を誘発する習慣を続けていては再発しかねません。
したがって、症状が落ち着いてきたら再発防止のため生活習慣改善のアドバイスを受けることも治療の一環です。
薬物療法
入院中は、対症療法として、自律神経失調症によるさまざまな身体・精神症状を抑える薬が処方されます。
なお処方される薬の種類は、抑うつ感を軽減させる抗不安薬・抗うつ薬や不眠を改善する睡眠薬、身体の各部位の苦痛を抑える痛み止めなどです。
患者との相性の良し悪しや、副作用が出る場合もあるため、主治医と相談しながら薬の種類や量を調整していきます。
また自律神経失調症は、内面的な問題をケアしなければ薬で症状を抑えても根本的な解決にならないので、ほかの治療と並行して進めるケースが大半です。
精神療法
精神療法とは、抑うつ状態や心疾患になるに至ったこころの問題へ医学的にアプローチし、気づきと行動改善を促す治療法を指します。
自律神経失調症の治療においてポピュラーな精神療法は、認知行動療法です。医師・カウンセラーなどとの対話を通し、患者自身が自律神経失調症の原因への理解を深め、思考や行動のクセをよりよい方向へ変える訓練が行われます。
自律神経失調症の入院治療にかかる費用相場
自律神経失調症の入院治療について考えるにあたり、当事者が気になるのは費用面の問題ではないでしょうか。自律神経失調症の入院治療にかかる費用は、主に次の2種類です。
- 治療費および入院治療
- 診断書の発行費用
それぞれ詳しくみていきましょう。
治療費および入院費用
厚生労働省の調査によると、2023年における精神科病院の入院1件あたりの点数は41 894.7点でした。1点=10円なので、料金に換算すると41万8,947円です。
任意入院および医療保護入院の場合はかかった医療費および入院費用は、総額の3割が自己負担であり、それ以外は各種健康保険で支払われます。
上記にくわえ、入院中の食事や療養などにかかる費用は別途となり、1件あたり54,515円が相場です。(出典:令和5(2023)年社会医療診療行為別統計の概況|厚生労働省)
ただし、措置入院および緊急措置入院の場合は、精神保健福祉法第30条により、かかる費用は公費もしくは各種健康保険でまかなわれます。(引用:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律|e-Gov法令検索)
精神症状による一般的な入院期間は、数週間〜1ヵ月未満です。入院が必要なレベルの自律神経失調症は、慎重な対応と継続した治療が必要であり、ある程度の期間を要します。
診断書の発行費用
診断書の発行費用は、医療機関によって異なるが、1部あたり約2,000円〜10,000円が相場です。
また、専門性が求められる診断や詳細な内容を記載する必要がある場合は、その分費用も高くなる傾向にあります。
自律神経失調症により入院する場合は、休職や各種支援制度の手続きに医師の診断書が必要です。
また復帰や、業務内容の変更および配置転換などの環境調整を要請する際にも、診断書の提出を求められるでしょう。
なお、診断書の有効期限は基本的に3ヵ月であり、それを過ぎると原則として再発行が必要です。
入院レベルの自律神経失調症の負担を軽減する方法
入院レベルの自律神経失調症の負担を軽減する方法は、主に以下3つです。
- 高額医療費制度を利用する
- 傷病手当金の支給を受ける
- 症状が軽度のうちに精神科・心療内科の医師に相談する
以下で、各項目を詳しく説明します。
高額療養費制度を利用する
高額医療費制度とは、医療費の自己負担額が大きい場合、あらかじめ定められた自己負担限度額以上の経済的負担が医療保険でまかなわれる制度です。
自己負担限度額は、70歳未満の方の場合、患者の年齢や収入に応じて24,600円〜140,100円の間で決められます(2024年12月時点)。なお1ヵ月あたりの医療費は、世帯で合算することも可能です。
医療費の算定期間は1ヵ月間であり、受診した医療機関ごとに計算されます。本制度を利用すれば、一定以上の治療費がかからないため、負担が軽減されます。
傷病手当金の支給を受ける
傷病手当金とは、心身の病気や怪我などで急に働けなくなった際、一定の条件を満たせば直前の所得に応じて計算された給付金が受け取れる制度です。会社員のほか、公務員にも適用されます。
ただし、利用は申請が前提です。申請に関する詳細は、勤務先の保健組合や共済組合へ問い合わせてみてください。
なお、傷病手当金についてさらに詳しく知りたいなら、こちらの記事を参考にしてください。
傷病手当金とは?申請の流れや支給条件、給付額の計算方法について解説!
症状が軽度のうちに精神科・心療内科の医師に相談する
心身および経済的な負担を抑えるには、そもそも症状が軽度のうちに治すことが肝心です。
症状が軽度なうちは基本的に入院は不要であり、通院での治療となります。
また、すみやかに治療を始めることで、悪化や慢性化が防げるため、治療にかかる期間も短くなるでしょう。もし症状の裏に別の病気が潜んでいた際の対処も、すみやかに行えます。
自律神経失調症は入院レベルになる前にすぐ治療を始めることが大切!
自律神経失調症は基本的に通院治療であり、入院を要するケースはほとんどありません。しかし、症状が進行すると通院では対応できなくなり、入院治療を勧められる場合もあります。
自律神経失調症などで精神科・心療内科の病棟に入院する際にかかる費用は、医療機関によって幅がありますが、総じて高額になりがちです。支援制度もあるものの、重度に達する前に早期治療で回復を目指すほうが、心身・経済面の双方の負担が抑えられます。
そのため「自律神経失調症かもしれない」と感じているなら、すぐに「よりそいメンタルクリニック」に相談して治療を始めましょう。
症状改善へ向けて真摯に寄り添うのはもちろん、傷病手当金の申請や診断書の即日発行などあらゆる困り事の解決を柔軟にサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。