「社交不安障害の重症度の診断基準は?」
「社交不安障害が重症になってしまったらどうすればいいの?」
「社交不安障害の診断テストはある?」
このようなお悩みはありませんか。
社交不安障害の重症度は、主に評価尺度を用いて診断されることが多いです。また、重症かもしれないと感じている方は、適切な治療をすぐ受けることで改善する可能性があります。
本記事では、社交不安障害の評価尺度や診断基準の種類、治療法などを紹介します。
なお、社交不安障害の治療は横浜よりそいメンタルクリニックにご相談ください。経験豊富な専門医が在籍しており、環境面や設備面も充実していて、専門的な治療を受けられます。
社交不安障害の重症度は明確に特定できるの?
社交不安障害の重症度をはかるときは、主に評価尺度を用いて検査します。
評価尺度とは、人から注目を浴びたり、恐怖や不安を感じる社会場面を想定して、どの程度不安感や恐怖感、回避したくなるかを数字で評価する方法です。
重症度はもちろん、社交不安障害の診断の参考や治療の計画を決める場合にも、使用されている心理検査になります。
患者さんが診察の際に伝えられなかった症状なども、評価尺度から把握ができます。しかし、評価尺度のみでは重症度を特定できません。
あくまでもひとつの参考にして、ほかの要素もみながら専門医がトータルで判断していくことになります。
社交不安障害とは?
社交不安障害とは、人から注目を浴びるような場面で強い緊張や不安を感じ、次第に人を避けるようになる病気です。
人前に出ると緊張することは誰にでもあると思います。しかし、社交不安障害の人はそういった場面や状況を恐怖に感じ、日常生活に支障をきたすほどになってしまうのが特徴です。
たとえば、社交不安障害の人が苦痛に感じる場面は、以下になります。
- 初対面の人と会う
- 多くの人の前で発言する
- 目上の人と会話したり食事したりする
上記のような場面で、極度の緊張から頭が真っ白になったり、手足が震えたりします。
社交不安障害の評価尺度【診断テスト】
社交不安障害の評価尺度には、主に以下の検査が使用されています。
- LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale 社交不安尺度)
- SPS(Social Phobia Scale 社会恐怖尺度)
くわしく解説します。
LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale:社交不安尺度)
LSASは、Michael R. Liebowitz(マイケル・R・リーボウィッツ)によって考案された社交不安障害の尺度です。
社交不安障害の重症度を客観的に数字で評価ができ、社交不安障害が疑われる方の診断にも活用されています。
LSASは、24の質問に対して不安や恐怖、回避行動の度合いを項目ごとに4段階で評価し、その合計点で社会不安障害の重症度を診断します。
質問数も多くなく、自分のペースで質問紙に記入していくため負担が少ないのが特徴です。以下にLSASの日本語版の内容を一部紹介します。
1 | 人前で電話をかける |
2 | 小人数のグループ活動に参加する |
3 | 公共の場所で食事をする |
4 | 人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む |
5 | 権威ある人と話をする |
6 | 観衆の前で何か行為をしたり話をする |
7 | パーティーに行く |
8 | 人に姿を見られながら仕事(勉強)する |
9 | 人に見られながら字を書く |
10 | あまりよく知らない人に電話をする |
11 | あまりよく知らない人達と話し合う |
12 | まったく初対面の人と会う |
13 | 公衆トイレで用を足す |
14 | 他の人達が着席して待っている部屋に入って行く |
15 | 人々の注目を浴びる |
16 | 会議で意見を言う |
17 | 試験を受ける |
18 | あまりよく知らない人に不賛成であると言う |
19 | あまりよく知らない人と目を合わせる |
20 | 仲間の前で報告をする |
21 | 誰かを誘おうとする |
22 | 店に品物を返品する |
23 | パーティーを主催する |
24 | 強引なセールスマンの誘いに抵抗する |
参考:社交不安症の評価スケール
上記の問いに対して複数当てはまり恐怖感や不安感がある人は、クリニックで診断を受けることをおすすめです。
SPS(Social Phobia Scale:社会恐怖尺度)
SPSは、他者からみられることに対する不安を測定するものです。
質問は20項目あり、自分がどのくらい当てはまっているのかを5段階で回答していきます。
以下、SPSの一部を紹介します。
- 人前で文字を書かなければならない時、不安になる
- 人といる時、赤面するのではないかと怖くなる
- 他の人達がすでに着席している部屋に入る時、自意識過剰になる
- レストランで知らない人と食事をする時は、 自意識過剰になる
- エレペ ーターに乗っている時、人が自分を見ているのではないかと緊張する
特に欧米では、よく使用されている検査です。特徴としては、他人からの注目や大人数の前での行動に、どれほど恐怖を持っているかを中心に測定している点が挙げられます。
【世界的な基準は2つ】社交不安障害の診断基準とは?
精神疾患の診断では、DSM-5とICD-10の基準に当てはめた診断が多いです。
- DSM-5(APA 米国精神医学会)
- ICD-10(WHO 世界保健機構)
上記のような診断基準を参考にして、最終的には医師が患者さんとの対話を通じて診断します。
DSM-5(APA:米国精神医学会)
DSMとは、米国精神医学会が作成している診断基準です。DSMは数回ほど改訂が行われ、DSM-5は第5版で2013年に公開されました。
社交不安障害の診断基準(DSM-5)は以下の通りです。
社交不安障害(DSM-5)内容 | チェック | |
A | 他者の注目を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安があること (社交場面の例:雑談、知らない人と会う、誰かと食べたり飲んだりする、談話をするなど) | 🔲 |
B | 自分の取る行動や不安な態度が変に思われるのを恐れる (恥をかいたり、拒絶されることなど) | 🔲 |
C | その社会的場面はほとんど常に恐怖や不安を引き起こす | 🔲 |
D | その社会生活場面を回避する、あるいは強い恐怖や不安を持ちながらひたすら我慢する | 🔲 |
E | 恐怖や不安は、その社会生活場面が持つ実際の脅威やその社会の文化的背景に釣り合わない | 🔲 |
F | 恐怖や不安、回避は持続的であり、一般的には6ヵ月以上続く | 🔲 |
G | 恐怖や不安、回避は、臨床的に大きな苦痛、または社会的・職業的、他の重要な機能の障害をもたらしている | 🔲 |
H | 物質(依存性薬物・医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない | 🔲 |
I | パニック障害・醜形恐怖症・自閉症スペクトラム障害などではない | 🔲 |
J | 他の疾患がある場合でも、恐怖、不安、回避はそれとは関係せず、その症状が顕著である | 🔲 |
なお、このチェックリストはあくまでも参考程度にして、正確な診断は医師にご相談ください。
ICD-10(WHO 世界保健機構)
ICD-10はWHO(世界保健機構)が1992年に公開した、社交不安障害の国際的な基準です。ICD-10では、以下の3つの基準を満たさなければなりません。
- 不安によって心理的症状や行動的症状、自律神経症状が現れている
- 不安は特定の社会的なシーンに限定されていたり、優勢となるような不安である
- 症状の不安によって特定の社会的シーンを可能な限り避けている
30年以上前に公開されたものですが、回避行動が必須とされているのが特徴です。
社交不安障害の症状
本章では、社交不安障害の具体的な症状について、2つの観点から解説します。
- 身体的症状
- 精神的症状
社交不安障害では、苦手な社会場面で起こる身体的な症状に加えて、そのような状況を避けようとする精神的な症状があらわれます。
身体的症状
社交不安障害の人は、人前に出たりすると身体にさまざまな不快症状があらわれます。
- 動悸
- 手足や声のふるえ
- 冷や汗をかく
- 赤面
- 気が遠くなる
- 胃腸の不快感
これらの症状は、緊張や不安から交感神経が過剰に優位になってしまうことで起こる自律神経症状です。
また、身体に起きている症状をほかの人に察知されて「変に思われないだろうか」と、さらに不安になって悪循環に陥ってしまいます。
これを予期不安といい、苦手な場面を回避し続けるとますます苦手意識が強まり、予期不安もさらに高まってしまうのです。
精神的症状
社交不安障害では、社会的場面で強い不安や恐怖を感じ、次第にそれらの場面を回避するようになります。
社交不安障害は、2パターンに分類されます。
- 限定した場面にだけ強い恐怖を感じる「限局型」
- 人と接することや社会の場の全体に恐怖を感じる「全般型」
限局型は、プレゼンや会食などの限定的な状況に限って不安が強くなるタイプです。特徴としては、普段の対人関係では普通に過ごせていても、苦手な場面になると急に不安が出てきてしまう点です。
それに対して、全般型は特定の場面だけでなく対人関係全般に恐怖感がつきまといます。どちらのタイプも、早めの治療が重要です。
社交不安障害は性格と思われがち
社交不安障害は、本人や周りが性格と思い込んでいるケースが多いです。
生きづらさを感じながらも「性格だから仕方がない」と我慢してしまい、症状が重症化してしまう可能性もあります。
単なる「あがり症」や「緊張しい」と考えるのではなく、病気の症状としてとらえてみると希望がみえてくるはずです。
学業や職業選択にも大きな影響を与えてしまい、将来に関わる問題でもあるので、性格と思い込まずに医療機関へ、一度相談してみましょう。
社交不安障害の治療法
本章では、社交不安障害の治療法を薬を使用するか否かで分類しながら、分かりやすく解説します。
- 精神療法
- 薬物療法
社交不安障害の治療法は2つの方法があり、組み合わせて治療していくことも多い傾向があります。自分に合う治療法を医師と相談しながら、見つけていくのが重要です。
精神療法
社交不安障害の精神療法は、下記の3つが主に用いられます。
- 認知行動療法
- 森田療法
- 暴露療法
それぞれみていきましょう。
認知行動療法
認知行動療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して誤った思考や偏りを見直し、行動を変えていくことを目指します。
ただ、染みついてしまった自分の考えや行動の癖は、すぐに変えられるものではありません。
考え方を変えるのは簡単な作業ではないですが、医師やセラピストとの話し合いを繰り返し、長い時間をかけて、少しずつ修正していきます。
ものの見方が変わってきたら、実際に少しずつ行動してみて確かめることが大事です。それが自信に変わってきます。即効性はありませんが、着実に進めていくと最終的に大きい効果を得られるでしょう。
森田療法
森田療法とは、日本人の森田正馬によって1919年に考案された治療法です。
ポイントは不安や恐怖を無理に取り除こうとするのではなく、あるがままの姿勢でいようという考え方です。
社交不安障害の方は、不安や恐怖、自律神経症状が出た時に「情けない」「もっとちゃんとしないと」などと考えて、自分を無理にコントロールしようとする傾向があります。
しかし、その考えにとらわれずありのままの自分を受け入れて、自分らしく生きていこうというのが最終的な目標になります。
森田療法は社交不安障害はもちろん、ほかの不安障害も治療の対象です。
暴露療法
暴露療法とは、自分が苦手な社会的場面や状況を再現した場所に、自分をさらして不安感や恐怖感を徐々に減らしていく治療法です。
いきなり強い不安と向き合うと逆効果になってしまうので、専門の心理士と相談しながら徐々に不安に触れていきます。恐怖や不安に少しずつ挑戦していくことで、「大丈夫なんだ」と感じていき、成功体験を重ねていきます。
自信を積み上げていって最終的に、不安な場面や状況に身を投じても「何もなかった」ことを心理士と一緒に確認することが重要です。
薬物療法
社交不安障害の方に処方される薬は、主に3つです。
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 漢方薬
それぞれみていきましょう。
抗うつ薬
社交不安障害には、抗うつ薬が効果が期待できます。
治療には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬がよく使われます。これは、神経伝達物質のセロトニンの量を増やす作用があり、不安を和らげてくれます。
- パキシル(一般名:パロキセチン)
- ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)
- レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)
- ルボックス/デプロメール(一般名:フルボキサミン)
SSRIは飲み忘れなく服用することで徐々に効果を発揮するので、飲み続けることが大切です。比較的副作用の少ない薬で、安全性も高いといわれています。
抗不安薬
社交不安障害には、抗不安薬も使用されます。現在使われている抗不安薬のほとんどが、ベンゾジアゼピン系といわれているものです。
SSRIは効果が出るまでに時間がかかりますが、抗不安薬は即効性が期待できます。
基本的に不安や緊張をやわらげてくれる効果があり、その即効性から外出先での急な不安のお守りとして活用できます。
ただ、長期や連日の服用には向いていません。何度も服用していると耐性がついて効かなくなったり、依存してしまうためです。
漢方薬
基本的には、前述した抗うつ薬や抗不安薬がメインの治療薬となっていますが、副作用や薬を飲むことに不安を感じている患者さんには、漢方薬が使われることもあります。
主に使用される漢方薬は、以下の通りです。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯
- 半夏厚朴湯
- 抑肝散
どれも不安や緊張に効果が期待できるのが特徴です。副作用のリスクも低く、体質改善も見込めるため、安心して服用できるでしょう。
社交不安障害が重症な人にもおすすめのセルフケア3選!
最後に、社交不安障害が重症な人にもおすすめのセルフケアを3つ紹介します。
- 自律神経を整える
- 自分なりのリラックス方法を見つける
- 良質な食事、睡眠をしっかり取る
それでは、くわしく見ていきましょう。
自律神経を整える
社交不安障害は、不安や緊張を感じたことによって自律神経症状を生じます。この障害の背景には、自律神経系の異常な反応が深く関わっています。
交感神経の高ぶりを抑えやすくするためにも、日頃から自律神経を整えることを意識してみることが大切です。
瞑想は自律神経のバランスを整え、扁桃体の過剰な反応を抑制する効果があると考えられています。
他には、軽い運動やヨガなどの身体を使った方法もおすすめです。気分が晴れて、気持ちも上がるかもしれません。
自分なりのリラックス方法を見つける
社交不安障害の方は、交感神経が優位になりがちです。外から帰ってきたら、リラックスをして副交感神経を優位にしてあげましょう。
- お風呂にゆっくり浸かる
- ストレッチをする
- 散歩をする
- 趣味に没頭する
病院での治療も大切ですが、普段のストレスケアも社交不安障害の症状を軽くするのに重要な要素です。ぜひ、いろいろなリラックス方法を試してみてください。
良質な食事、睡眠をしっかり取る
食事は、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。特に、オメガ3脂肪酸を多く含む食品は、抗炎症作用があり、自律神経の機能を改善する可能性があります。
野菜や果物も積極的に取り入れてみましょう。
また、良質な睡眠は、自律神経のバランスを整えてくれるので意識してください。寝室の環境を整えたり、寝る前にスマートフォンを触らないことで睡眠の質が向上します。
重症度が分からない場合は医師に相談を!
社交不安障害の重症度を測定する検査はありますが、最終的には医師の診断になります。
症状に悩みを抱えている方や、性格のせいだと思い込み生きづらさを我慢している方は、一度医療機関の受診を強くおすすめします。
当院では社交不安障害はもちろん、うつ病などの精神疾患も含め幅広く対応が可能です。
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