「適応障害になったのは家族(母親・父親)のせいかもしれない」と悩んでいませんか。
事実として、身近な存在である父親や母親、パートナーが原因で適応障害を発症するケースはめずらしくありません。また自分では気付かないうちに、家庭環境の問題から心身に不調が出ている場合もあります。
本記事では、不健全な親子・夫婦関係や家庭内不和が適応障害の発症にどのような影響を与えるのか、よくある家庭環境の特徴も踏まえてまとめました。あわせて、実際に家族が原因で適応障害になった場合の適切な対処法もお伝えします。
なお、家族関係に悩みがあり、適応障害と思しき症状が出ている場合は、すぐに「よりそいメンタルクリニック」へお越しください。適応障害かどうかの診断や、家族関係との関連性も含め、それぞれのケースに応じた最適な医療を提供します。
家族(母親・父親)と適応障害の原因との関連性について
まず、家族(母親・父親)と適応障害の原因との関連性を、次の3つの視点から考えてきましょう。
- そもそも適応障害とは
- 適応障害は家族関係も発症の理由になる場合がある
- 家族が原因となって適応障害を発症するメカニズム
以下でそれぞれ解説します。
そもそも適応障害とは
適応障害(adjustment disorder)とは、自分が置かれている現状にうまく対応できないことからさまざまな不調をきたす精神疾患です。別名「適応反応症」とも呼ばれます。
適応障害は、主に身体症状と精神症状の2つの病態を呈することが特徴です。具体的には、下記のような症状が現れます。
【適応障害の身体症状】
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【適応障害の精神症状】
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気分の落ち込みやそれにともなう身体的な不調は誰にでもあることです。しかし適応障害になると、不調が長引き、日常生活に支障をきたしかねません。
なお、適応障害はうつ病と症状が似ていますが、両者は異なる病気です。適応障害はストレッサーとなる対象に近づいたときに症状が出やすく、常に不調が持続するわけではない点に違いがあります。
また、適応障害は本人の能力や努力とは関係ないものの、なりやすい気質が存在するのも事実です。どのような人が適応障害になりやすいのかを知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
適応障害は家族関係も発症の理由になる場合がある
人によってつらいと感じることが異なるように、適応障害の原因も人によってさまざまです。いくつかの要因が複合的に絡んでいるケースも多く、家族関係はその一因となります。
今まで家族に悩まされてきたストレスが蓄積されており、それが別のショックな出来事をきっかけに適応障害を発症することもあれば、その逆もあるでしょう。
また家族関係に問題を抱えたまま成長している場合、円滑な人間関係が築けなかったり、些細な悩みから大きなストレスを感じたりしやすくなります。
適応障害の治療・回復は、発症の原因を突き止めることが第一歩です。もし父親や母親の態度が要因の一つなのであれば、家族との適切な対処法を身に付けないことには改善は難しいといえます。
家族(母親・父親)が原因となって適応障害を発症するメカニズム
適応障害が発症する主な原因はストレスです。人間関係のストレスが発症のきっかけとなるケースも多く、特に身近な存在である家族は適応障害の原因に深く関与しているといえます。
そもそも人は強いストレスを感じると、心のバランスを崩し、それが気分や身体的な不調となって出現する場合があります。
不安感や動悸、発汗など一時的な不調なら誰にでも起こりますが、それが2週間以上続き、日常生活に支障が出る場合が適応障害と診断される目安です。
なお、適応障害はストレッサーとなる要因と物理的・心理的な距離をとり、適切な治療を受けることで改善が見込めます。家族が適応障害の発症と関係しているなら、具体的な問題点を把握し、対処することが必要です。
適応障害の原因になりやすいパターンの家族関係
適応障害の原因になる家族関係には、次のような共通したパターンが存在します。
- 家族からの過度な干渉や支配的な家庭環境
- 父親・母親からの厳しすぎるしつけ
- 父親・母親の放任主義
- 家族による自己中心的すぎる言動
- 両親や夫婦の不仲
- 育児・介護でのワンオペレーション
- 家族との離別・死別
上記の家庭環境は、家族にストレスとネガティブな感情を植え付け、適応障害を発症しやすくなります。以下で、適応障害につながる具体的な問題点をみていきましょう。
家族からの過度な干渉や支配的な家庭環境
適応障害を誘発するのは、子どもやパートナーの意見を認めず、自らの価値観が正しいとしてそれを押し付ける人の存在です。
本人が家族のためを思ったがゆえの言動でも、相手にとっては負担で、それが適応障害の原因となるケースがあります。
特に身近な存在である家族からの過干渉や支配は回避しづらく、拒否して関係性が悪化するのを恐れて身動きがとれなくなりがちです。
判断や選択など何事にも必ず口を出し、家族からが支配されているような関係性は不健全であり、心身をじわじわ蝕んでいきます。
父親・母親からの厳しすぎるしつけ
親から常に完璧を求められ、厳しすぎる態度をとられ続けて育つと、適応障害の素因が形成されやすくなります。適応障害になった方の中には、意向に沿わないと叱責されたり、無視されたりしてきたと訴えるケースもめずらしくありません。
また適応障害を発症する方に多いのが、兄弟姉妹やよその家庭の子どもと比較し、できないことを激しく責めたり、一方を優遇する態度をとられたりしながら育ったケースです。
ましてやしつけと称した体罰・暴力を振るう家族がいる家庭では、常に萎縮した状態で育つことになるため、心身が疲弊していくでしょう。
そういった支配的な家庭環境は、意識的・無意識に関わらず、親が子どもを自らの所有物だと思い込んでいることに由来します。一般的にみて無理のある要求でも「子どもは親の言うことを聞くのがあたりまえ」という態度を崩しません。
理解されない孤独感、厳しい態度に対する苦しみが続くと、徐々に心が苛まれていき、結果として適応障害を発症してしまいます。
父親・母親の放任主義
一般的に、父親・母親が子どもに干渉しすぎるのはよくありませんが、反対に放任すぎるのも悪影響です。
「自分はいらない子どもなのかもしれない」「誰にも受け入れてもらえない」という孤独感から、適応障害を発症しやすくなります。
また両親から十分にかまってもらえないと、健全な自己肯定感が育まれず、将来的に適応障害といった精神疾患になりやすい素因が育まれてしまいがちです。
家族による自己中心的すぎる言動
家族のうちの一人が自分を中心に物事を考え行動する態度をとっていると、心身ともに距離の近い子どもやパートナーに大きな負担と苦痛を与えます。特定の家族の意見や行動に周囲が合わせないと、ヒステリックに騒ぎ立てるケースもあるでしょう。
自己中心的な言動を繰り返す家族は、そのときの気分次第で言動が一変するため、被害者側は常に家族の顔色をうかがわなければなりません。
そうして一緒にいるうちに距離感の悩みやイライラ感から心が疲れ果て、いずれ気分や身体にも不調が生じてしまいやすくなります。
両親や夫婦の不仲
両親や夫婦の仲が悪い家庭環境にいる方は、適応障害になる可能性が高まります。両親や夫婦のいずれか一方のDV(家庭内暴力)やモラルハラスメントがある家庭も、直接の被害者はもちろん子どもの生育にとっても不健全です。
また家族の人間関係に不和がある場合、家庭は安らげる場所ではなくなるばかりか、心身に大きなストレスを与えます。
ストレスを受けている側は、自らが被害者にも関わらず、次第に自分の責任だと罪悪感に苛まれるようになるケースもめずらしくありません。そういった家族からのストレスにうまく適応できないと、結果的に心身に不調をきたしてしまいます。
育児・介護でのワンオペレーション
非協力的パートナーやひとり親などの事情から、ワンオペレーションで育児や介護をこなし続け、そのストレスで適応障害を発症するのもよくあるケースです。
「ワンオペレーション(one operation)」とは、本来であれば複数の人数で担当すべき作業を一人でやらなければならない状況を指します。略語である「ワンオペ◯◯」というワードは、今や大きな社会問題となりました。
子育てや介護には、心身ともにエネルギーが必要です。責任も重大であり、身近に頼れる相談相手がいない状況は負担が大きすぎます。
家族との離別・死別
家族との離別や死別は、人生において非常にショッキングな出来事であり、深い喪失感を感じさせます。誰にでも起こりうることではありますが、家族を失った悲しみから立ち直るにはある程度の時間を要するでしょう。
とはいえ、離別・死別の直後は難しくとも、少しずつ回復していくケースが大半です。しかし、人によっては悲しみをいつまでも受け入れられない方もいます。離別・死別後の反応が長く続くと、適応障害を発症する可能性もあり、その場合は治療が必要です。
家族が原因で適応障害になってしまった場合はどうする?
家族との仲が原因で適応障害になっている疑いのある方は、次の行動を心がけてみてください。
- メンタルクリニックを受診する
- 家族に適応障害への理解を促す
- 家族と物理的に距離を置く
- セルフメディケーションを実践する
以下で、上記4つの詳細と推奨される理由を説明します。
メンタルクリニックを受診する
適応障害の治療やそれにまつわる悩み事は、原因に関わらず、精神科・心療内科の医師や専門のカウンセラーに相談するのが最善策です。
友人や知人など周囲に相談するだけでも、心が軽くなるかもしれません。ただ、専門知識がないと理解が得られなかったり、適応障害を発症している方にとって不適切な対応をとられたりすることもあるでしょう。
多くの場合、適応障害といった精神疾患の苦しみは、本人や専門家にしか正しく理解できません。また心の悩みは、仕事や私生活に関係のない第三者のほうが話しやすい傾向にあります。
早期に適切な治療を受けないと、適応障害の症状がどんどん悪化して回復が遅れる恐れもあるため、すみやかに精神科や心療内科を受診してください。
家族に適応障害への理解を促す
もし可能であれば、自分が適応障害であることとその原因を家族に伝えておくことをおすすめします。なぜなら適応障害の治療は、家族の協力があるとスムーズに進みやすいためです。
ただ、自らのこころの状態の原因が家族にあることを伝える際は、互いに感情的になってしまうことも多いでしょう。
大切なことは、適応障害の具体的な病状および原因について、事実のみを淡々と述べることです。また、適応障害の治療法・対処法と、それに際して家族に求める配慮の内容も伝えておくとよいでしょう。
なお、自分で家族に説明するのが難しい場合は、主治医との診察に同伴してもらう方法もあります。専門家による的確な対処法の説明を受けることで、家族の理解も深まり、回復の手助けになるはずです。
ただし、家族の態度が適応障害の原因となっている場合、事情を説明しても受け入れてもらえないことも少なくありません。場合によっては、まったく理解されないばかりか、さらにストレスを溜める原因になることもあり得ます。
そのため、無理に認めさせようとするのではなく、あくまでも「分かってくれたら運がいい」くらいの軽い気持ちでいるほうがダメージが少ないかもしれません。
家族と物理的に距離を置く
適応障害の治療・改善には、その原因となるストレッサーと距離を置くことが肝心です。家族だからといって無理に関わろうとすると、不要な配慮や見当違いのアドバイス、無理解な言葉を投げかけてくるケースもあるでしょう。
その場合は、直接のコミュニケーションを最小限に留めることをおすすめします。縁を切る必要はありませんが、家族であっても別の意思を持つ人間であり、分かり合えるとは限らないことを理解しましょう。
例えば、同居の場合は独立、別居が難しいなら定期的に友人宅やホテルに泊まるなど、家族と距離を置く時間を作るよう工夫できるはずです。
また、メールやSNSは、家族と距離を置きたいときに便利な連絡手段となります。家族からの着信が過度な場合は、コミュニケーションがストレスにならないよう、一時的に返信を控えるのも一つの手です。
セルフメディケーションを実践する
自分でできる適応障害の対処法を探している場合は「セルフメディケーション」を実践してみてください。セルフメディケーションとは、自分で病気や障害をケアすることであり、具体的に以下のような例が挙げられます。
- 十分な睡眠をとる
- 栄養バランスのとれた食事を心がける
- 適度な運動を取り入れる
- 過度な飲酒や喫煙を控える
- 自分が楽しめる趣味や活動を見つける
なお心の健康のためには、食事でタンパク質やビタミン類、ミネラルを積極的に摂るようにするのが効果的です。適度な時間の良質な睡眠も、ストレスに負けない心身を育みます。気分転換に運動を取り入れるなら、軽く汗ばむ程度がベストです。
くわえて、趣味や好きな活動に楽しみながら取り組めば、気持ちが上向きになり、不調が改善しやすくなるでしょう。
ただし、専門的な知識なくとった行動が逆効果になるケースもあります。たとえば飲酒や喫煙は、一時の気分転換にしかならず、依存性も高いため、極力控えてください。
したがって、自己判断に頼るのではなく、医師などの専門家の意見を取り入れ、治療と並行しながら実践していくことが推奨されます。
家族が原因の適応障害に関する相談は「よりそいメンタルクリニック」へ!
不健全な家庭環境は、心身へ悪影響を及ぼし、適応障害になる可能性を高めます。また、すぐに発症しなくても、将来的に適応障害になりやすい素因をつくってしまうケースも少なくありません。
もし自分が適応障害かもしれないと感じたときは、早急に精神科や心療内科を受診しましょう。治療を受けつつ専門家からアドバイスをもらえば、家族から理解してもらいやすくなるほか、適度な距離の保ち方も学べます。
適応障害の疑いがある場合や、家族関係の悩みから心身のバランスを崩しているときは、お気軽に「よりそいメンタルクリニック」へご相談ください。ストレッサーとなる状況や関係は人それぞれ異なるため、医師やスタッフと一緒に適切な対処法を考えていきましょう。