これまで問題なく仕事に行けていたにもかからわらず、ある出来事をきっかけに突然働くのが怖いと感じるようになった場合、それは適応障害かもしれません。
適応障害を発症すると、精神・身体の双方に支障をきたし、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
正しい対策方法を知らないと、症状が悪化し、自らの意志とは関係なく動くことすらままならなくなる恐れがあります。
本記事では、適応障害と働くことへの恐怖感がどのように関わっているのかを分かりやすくまとめました。
なお、適応障害の兆候があり、まだ医療機関を受診していない方は、ぜひ「よりそいクリニック」へお越しください。早期回復のためには、一刻も早い治療開始が不可欠です。
働くのが怖いと感じる場合は適応障害の可能性がある
仕事上の嫌な出来事や職場の人間関係などに悩むうちに「働くのが怖い」と思い始めたときは、適応障害の可能性があります。
まず、次の2つの視点から適応障害の特性を把握し、仕事・職場に対する恐怖感と関連性を考えていきましょう。
- 適応障害の特徴とは
- 適応障害になりやすい人
以下で、それぞれの詳細を説明します。
適応障害の特徴とは
そもそも適応障害とは、特定のストレッサーによる心理的な負担により心のバランスを崩す病気です。
アメリカ精神医学会の診断基準「DSM‐5」では「心的外傷およびストレス因関連障害群(Trauma-and Stressor- Related Disorders)」における精神障害の一種に分類されます。
適応障害は、そのきっかけとなる特定のストレスが発生したタイミングから、1ヵ月〜3ヵ月以内に発症するケースが大半です。
適応障害になりやすい人の特徴とは
適応障害には、発症の誘因となる気質が存在します。一般的に、適応障害になりやすいのは下記のような性格です。
- 生真面目な人
- 神経質な人
- 責任感が強すぎる人
- 完璧主義な人
- 繊細な人
上記の気質に該当する方は、ストレス耐性が低く、業務の内容・量や職場の人間関係、環境の変化などによる悪影響を受けやすい傾向にあります。
症状から確認!適応障害だと働くのが怖いのはなぜ?
次に、適応障害になると働くのがなぜ怖くなるのかを、下記2つの観点から確認してきましょう。
- 適応障害で働くのが怖い精神的な理由と主な症状
- 適応障害で働くのが怖い身体的な理由と主な症状
ただし、働くのが怖いからといって、必ずしも適応障害とは限りません。うつ病といった別の精神疾患が原因で心身に不調をきたし、仕事に恐怖感を抱いている場合もあります。
適応障害で働くのが怖い精神的な理由と主な症状
適応障害になると働くのが怖いと感じるようになる精神的な理由として、主に以下3つが挙げられます。
- 職場での異動で新しい環境に慣れるのか不安
- 業務でミスして周りから仕事ができない人と思われるのが怖い
- 期待されていて思うような結果が出ないときに自己嫌悪に陥る
それぞれみていきましょう。
職場での異動で新しい環境に慣れるのか不安
適応障害になっている方は、不安感や不信感などのマイナスの感情が強く働きやすくなるため、大きな変化が怖くてたまりません。
たとえば、異動や昇進などにより、慣れない職場で新たな人間関係を構築しなければならないと思うとひどく不安になり、恐怖感を抱きがちです。
また、適応障害だと精神的に不安定になるので、訳もなくイライラしたり、急に怒りだしたりすることを繰り返すうち、職場内の不和を招くケースも少なくありません。
本人としては職場に居場所がなくなったように感じ、働くこと自体が怖くなっていくようになります。
業務でミスして周りから仕事ができない人と思われるのが怖い
適応障害を発症すると普段より仕事でミスしやすく、それに対する周囲の目が気になって働くのが怖いと感じるようになります。
判断力、集中力の低下は適応障害の特性であり、決して本人の努力不足ではありません。そもそも、仕事をしている以上、ある程度のミスはつきものです。
しかし抑うつ状態だと、あらゆることに恐怖感・不安感を覚えやすくなり、普段なら気にならないような些細なミスでも重大なことのように感じます。
そうして頻繁に失敗していると「周りから冷たい目で見られるのでは……」と疑心暗鬼に陥り、結果として働くのが怖いと感じるようになります。
期待されていて思うような結果が出ないときに自己嫌悪に陥る
適応障害を患っている方が「働くのが怖い」と思うのは、周囲からの期待に全力で応えようとすることも理由の一つです。
心身に不調があると、集中力や判断力などのパフォーマンスの低下により本来の実力が発揮できないため、多くの場合うまくいきません。
思うような結果が出なかった場合、仕事で自らの理想と現実のギャップに苦しみ「働くのが怖い」という気持ちを呼び起こします。
適応障害で働くのが怖い身体的な理由と主な症状
適応障害になると、気分がひどく落ち込むだけではなく、身体的な不調から働くのが怖いと感じるようになるケースもあります。なお、適応障害の主な身体症状は以下のとおりです。
- 頭痛や動悸が起こる
- 立ちくらみやめまいがする
- 疲労感やだるさが続く
- 食欲の低下や過食などの症状に陥る
以下では、上記4つの適応障害の身体症状が、仕事への恐怖感へつながる理由を説明します。
頭痛、動悸が起こる
頭痛や動悸は適応障害の主症状の一つであり、それが起こっている最中は働くのが困難なほど深刻な状態です。思うように仕事ができないことから自己嫌悪に陥り、働くのが怖くなっていく方もめずらしくありません。
また、勤務時間中に頭痛や動悸がするのではないかという不安感で動揺してしまい、余計にミスや症状の悪化を招きます。
立ちくらみやめまいがする
適応障害になると、しばしば立ちくらみやめまいが生じやすくなりますが、人によっては仕事へ行けなくなるほど重症です。
また立ちくらみやめまいがいつ起こるかと気にしすぎることで、心理的な負担から症状や精神状態の悪化を招きます。
立ちくらみやめまいがひどいと、そのまま倒れてしまう危険もあるため、症状が落ち着くまで休まなければならないケースもあるでしょう。
疲労感やだるさが続く
適応障害になると、慢性的な疲労感やだるさが続くため、出勤はおろか、朝起きることすら大きな負担です。特に適応障害の身体症状は朝に強くなる傾向にあり、遅刻や欠勤を繰り返すようになる方もめずらしくありません。
そして適応障害による不調で遅刻や欠勤が増えると、その罪悪感から、ますます働くのが怖くなっていきます。
食欲の低下や過食などの症状に陥る
適応障害になると食欲が増減する方も多く、それが仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。
食欲の低下はエネルギー不足や栄養失調を招き、身体の調子を壊してしまいかねません。また過食も身体にとって大きな負担になるだけではなく、自身の食欲のコントロールがきかないことから、メンタル面も蝕んでいきがちです。
心身ともに弱った状態ではまともに働けるはずもなく、結果的に仕事へ恐怖感を抱くようになります。
「働くのが怖いのは適応障害かも?」と思ったときの対策方法
現在、仕事上のストレスから「働くのが怖い」「適応障害かもしれない」と感じている方は、早急に以下の方法で対処しましょう。
- 精神科や心療内科を受診する
- メンタル専門の窓口へ相談する
- ストレスチェック制度を利用して不調を申告する
- メンタルヘルス研修会に参加する
- 職場へ環境調整を申請する
- 自分なりのリフレッシュ方法を見つける
- 症状が治るまで休職する
- 退職・転職を検討する
上記8つの対処法について、それぞれ詳しく説明します。
精神科や心療内科を受診する
適応障害と思しき症状が出たときは、すぐに専門の医療機関を受診してください。メンタル専門の医療機関は精神科もしくは心療内科であり、専門の病院のほか、双方の機能を併せ持つ医療機関もあります。
適応障害を治すには、医師による診断および医学的なアプローチが不可欠です。くわえて、すみやかな治療開始が早期回復の鍵であり、ストレスと距離を置く、もしくは取り除いて治療を進めれば、平均6ヵ月で改善が期待できるといわれています。
逆に、早めに治療しないと適応障害の症状がどんどん悪化し、仕事のパフォーマンスが落ちてますます働くのが怖くなってしまいかねません。また、むやみに自己判断で対処しようとすると、逆効果になる場合もあるため、早急に医師の判断を仰ぐことをおすすめします。
適応障害の主な治療方法は、主に通院による薬物療法と精神療法です。対症療法として薬で不調を抑えつつ、適応障害になるに至った認知の歪みの矯正や、ストレスとの付き合い方を学んでいきます。
症状が改善するにつれ、仕事への不安感・恐怖感が徐々に薄れ、働くことが怖くなくなります。
メンタルヘルス専門の窓口へ相談する
適応障害といった精神疾患・障害に基づく仕事の悩みは、メンタルヘルス専門の各種窓口へ相談するのも一つの手です。
なお、精神的な悩みの相談窓口は、精神科・心療内科のほか、全国に設置されている精神保険福祉センターなどが挙げられます。
また職場によっては、産業医やメンタルヘルス専門の相談窓口・制度が設置されている場合もあるため、それらを利用するのもよいでしょう。
対面相談に抵抗感があるなら、厚生労働省管轄の『こころの健康相談統一ダイヤル』や『働く人の「こころの耳相談」』などへ電話したり、メールやSNSで伝えたりする方法もあります。
どのような手段でも構わないので、一人で悩みを抱え込まず、専門知識を持つ第三者に相談することが大切です。
ストレスチェック制度を利用して不調を申告する
自分が適応障害にかかったことを会社に伝えづらい場合は、ストレスチェック制度を活用するとよいでしょう。ストレスチェック制度とは、会社が従業員のストレス状況を把握するとともに、本人の自覚もうながし精神疾患リスクを軽減するために設置された制度です。
従業員数50人以上の企業事業所にはストレスチェックの実施義務、それに満たない場合は努力義務が課せられています。あわせて、検査結果を分析し、職場の環境改善に活かさなければなりません(出典:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省)。
調査の対象となるのは、以下の要件を満たす労働者です。
- 雇用期間に定めのない労働者
- 1年以上の雇用期間およびその予定がある労働者
- 1週間の労働時間が所定の4分の3以上の労働者
(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省)
なお、ストレスチェックの結果やプライバシーは厳守されます。適応障害のつらさをありのままに申告するようにしましょう。
メンタルヘルス研修会に参加する
職場によっては、独自のメンタルヘルス研修を実施している場合があります。メンタルヘルス研修は義務ではないものの、仕事に関連する精神的な問題の防止と早期対処が可能になることから、取り入れる会社も増えてきました。
なお、メンタルヘルス研修の種類は主に次の3つです。
研修の種類 | 目的・内容 |
セルフケア研修 | ストレスケアの重要性を周知し、自らの健康を守る手段やストレスとの適切な付き合い方を身に付ける |
ラインケア研修 | 職場を管理・監督する立場にある人が、部下の異変に気付き、治療へ向けた声かけや環境改善などの適切な対応を学ぶ |
ハラスメント研修 | 職場内のハラスメント予防と解決を徹底および周知する |
(出典:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省)
上記のうち、適応障害に悩む一般労働者の参加が推奨されるのはセルフケア研修です。自らのメンタルの不調をいち早く自覚できるとともに、症状の悪化防止のための適切な対処法が学べます。
また、職場で受けたハラスメントが原因で適応障害を発症した場合は、ハラスメント研修への参加がおすすめです。自分が不当な扱いを受けていることの自覚が生まれるとともに、適切な相談機関が分かるようになるでしょう。
職場へ環境調整を申請する
現在の業務内容や職場の人間関係が原因で適応障害を発症した場合は、適切な環境調整を行う必要があります。仕事や職場に関わる環境調整の具体例は以下のとおりです。
- 業務量を減らす
- 配置転換を希望する
- 勤務場所および時間の調整を申し出る
適応障害は、発症のきっかけとなったストレッサーの近くにいるままだと治りにくいため、仕事や職場が原因なら環境調整が不可欠です。必ずしも環境調整に応じてもらえるとは限りませんが、上司や人事担当者に相談してみるとよいでしょう。
仕事で直接関わる相手に相談するのが難しい場合は、産業医や主治医に相談してアドバイスしてもらうようおすすめします。
自分なりのリフレッシュ方法を見つける
仕事や職場でつらいことや嫌なことがあったとき、気軽にリフレッシュできる方法を把握していれば、適宜ストレスが発散できます。
たとえば、職場内外でストレスを感じた際には、次のような方法でリフレッシュを図りましょう。
- 落ち着ける場所へ行く
- 気楽に話せる相手に相談する
- 休憩時間に軽い睡眠をとる
- 休日は趣味に没頭する
- 適度な運動を取り入れる
上記にくわえ、規則正しい生活とバランスのよい食事も、ストレスに強い心と身体を育むために重要です。起床・就寝の時間を一定させて睡眠時間を確保するとともに、ビタミン・ミネラルやタンパク質が豊富で栄養バランスのとれたメニューを実践してみてください。
症状が治るまで休職する
適応障害の症状がひどいときは、一時的に休職することも検討しなければなりません。
通院治療も可能ですが、そのまま働き続けると、症状が悪化してうつ病や双極性障害などのより重篤な精神疾患を引き起こし、長期治療が必要となる恐れがあります。
休職中の生活に金銭的な不安を感じるかもしれませんが、勤務先の福利厚生制度や、各種公的支援制度を利用することで負担が軽減するはずです。
なお、各種支援制度には、自治体によって異なる適用条件が定められている場合があります。申請の際は職場や主治医、自治体の障害福祉窓口などに問い合わせてください。
退職・転職を検討する
適応障害を根本的に治すためには、退職や転職が必要な場合があります。通院治療や休職をしたところで、根本的な原因となるストレスが解消されないことには、同じことの繰り返しになりかねません。
また、症状改善に時間がかかりそうなときは、休養を経て再就職する方法もあります。
ただ、適応障害の症状が重いタイミングで感情に任せて退職・転職を判断してしまうと、後悔するケースが多い傾向にあります。
そもそも、適応障害の治療には、まず安静に休養することが最優先です。退職や転職について考えるときは、症状が改善した後、主治医や職場の上司・人事担当者とよく相談して決めることをおすすめします。
働くのが怖いならすぐメンタルクリニックへ受診を!
適応障害になると、心身のさまざまな部位の不調から、働くことが怖いと感じやすくなります。仕事や環境の変化に心と身体がついていけず、常に失敗への不安感やうまく対処できないことへの自己嫌悪に苛まれるようになるためです。
適応障害の兆候がみられる場合は、とにかく精神科や心療内科への受診を優先してください。
適応障害に苦しんでいるなら、一度「よりそいメンタルクリニック」に相談してみませんか。一人ひとりの悩みやつらさへ真摯に寄り添い、こころが元気を取り戻せるようサポートします。診断書の即日発行にも対応しているため、休職を検討している方はぜひお気軽にお問い合わせください。