「適応障害の診断基準は?」
「クリニックに受診する前のセルフチェックシートはある?」
「診断後のより良い過ごし方は?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
適応障害の診断基準を理解しておくことで、自身が当てはまる場合にすぐにクリニックを受診することが可能となります。早期治療は症状の重症化を防ぎスムーズな回復につながります。
本記事では、適応障害の診断基準やセルフチェックシートを紹介します。また、適応障害と診断された際のより良い過ごし方も解説するため参考にしてください。
なお、少しでも「適応障害かも?」と感じた場合は、早急に治療を進める必要があるため、よりそいメンタルクリニックに相談してください。
医師が必要と判断した場合の診断書の即日発行に対応しているため、すぐに治療ができます。
適応障害の診断基準「DSM-5」
適応障害は、アメリカ精神医学会によって定められた「DSM-5」という診断基準が用いられることが一般的です。
世界的に権威のある診断基準として、日本をはじめ世界の医療機関で使用されています。「DSM-5」の診断基準は以下の通りです。
引用:「適応障害の診断基準」株式会社リヴァ
上記の項目を全て満たす場合は適応障害と診断されます。
鑑別診断
適応障害を診断する際には、他の精神疾患との鑑別が重要です。鑑別診断とは、似た症状を持つ疾病を正確に区別し、適切な診断を下すために行われる診断方法です。
例えば、適応障害はうつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと症状が重なる場合がよくあります。
しかし、適応障害では特定のストレス因子が症状の発端であり、ストレス因子の除去や状況の改善によって症状が軽減する点がポイントです。
発症している精神疾患をしっかりと把握して、それぞれに適した治療を受けるために鑑別診断は重要な役割を果たします。ストレスが原因となって発症する精神疾患は様々なものがあるため正確な診断が必要となります。
適応障害と診断されるためのポイント
適応障害などの精神疾患は初診での診断が難しく、経過観察になるケースがよくあります。しかし、適応障害は放置する期間が長くなればなるほど症状が悪化する可能性も高まります。
そのため、医師から初診で適応障害と正確に診断してもらうためにはいくつかのポイントを理解しておくことが大切です。
- セルフチェックシートで事前確認する
- 具体的な症状を医師に伝える
それぞれの詳細を確認していきます。
セルフチェックシートで事前確認する
自分が適応障害である可能性を疑う場合、セルフチェックシートを活用するのがおすすめです。セルフチェックシートの項目に複数当てはまる場合は適応障害の可能性があります。
もちろん、自己判断で確定診断を下すことはできませんが医師に状況を適切に伝えるための準備にもなります。
事前に自分の状態を整理し、具体的な症状やその原因と思われるストレス因子について記録しておくと診察がスムーズに進みます。
具体的な症状を医師に伝える
適応障害の診断を受けるためには、医師に具体的な症状を正確に伝えることが重要です。
症状の例として、仕事や家庭環境によるストレスにより持続する気分の落ち込み、不安感、集中力の低下などがあります。
また、身体的な症状として食欲の変化や睡眠障害が見られることもあります。
可能であれば、症状がいつから始まったのか、その頻度や強度、またストレス源が何であるのかを具体的に記録しておくと医師が適切に診断しやすくなります。
適応障害とともに併発しやすい精神疾患
適応障害とは、環境の変化やストレスに適応する過程で様々な心や体の不調が現れる疾患です。この状態が続くと他の精神疾患を併発する可能性があります。
中でも特に注意が必要なのは以下の精神疾患です。
- うつ病
- 不眠症
- 自律神経失調症
- パニック障害
それぞれの疾患の特徴を確認していきましょう。
うつ病
適応障害が慢性化する中でしばしば併発するのがうつ病です。
適応障害自体は特定のストレス源に対する一時的な反応と言えますが、ストレスが長期間続く場合、脳の働きに悪影響を及ぼし、うつ病を併発することがあります。
うつ病の症状としては、持続的な気分の落ち込みや無気力、興味や喜びを感じにくくなることが挙げられます。
仕事や日常生活への意欲を失うことも多く、適応障害による日常的なストレスが原因であれば、適切なカウンセリングや医療的介入が必要です。
不眠症
適応障害が続くと、ストレスや不安が夜間にも影響し、不眠症を引き起こすケースが少なくありません。
不眠症は睡眠が十分に取れない状態が続く疾患で、寝つきが悪い、途中で目覚めて眠れなくなる、早朝に起きてしまうといった症状が特徴です。
適応障害による不安や焦燥感は、睡眠の質を妨げる要因となります。
不眠症が改善されないと、疲労感や集中力低下、さらには心身の健康にも悪影響が及ぶため早めの対処が必要です。
自律神経失調症
適応障害が引き金となり、自律神経失調症を併発する場合もあります。
ストレスによって自律神経のバランスが崩れることで、体の様々な部位に異常が現れるのが特徴です。
頭痛、動悸、消化不良、めまいなど症状は多岐にわたり、原因不明の体調不良として現れることが多いです。
適応障害は精神的負荷が継続的にかかるため、自律神経が乱れやすくなります。
パニック障害
適応障害によるストレスからパニック障害を併発する場合もあります。
パニック障害は突然の強い不安感や恐怖感、身体的な発作(動悸、息苦しさ、発汗など)を引き起こす疾患です。
適応障害が進行するとストレスへの耐性が低下し、不安が急激に高まることがありそれがパニック発作の併発へとつながることがあります。
医師から適応障害と診断された場合の治療法
適応障害と診断された際の治療法を4つ紹介していきます。
- 休職
- 環境調整
- 薬物療法
- 精神療法
それぞれの治療法について詳しく確認していきます。
休職
適応障害の治療において休職は非常に効果が期待できる治療法とされます。
仕事や学校といった日常のストレス要因から一時的に離れることで、心と体に休養を与えることが重要です。
また、適応障害は環境要因が主な原因となるため、ストレス源から距離を置くことで症状の悪化を防ぐことができます。
休職は医師の診断書を基に計画的に行い、無理に働き続けることを避けることで回復がスムーズになります。
環境調整
適応障害の治療において、その根本的な原因であるストレス環境を調整することは欠かせません。
たとえば、職場の業務量を減らす、対人関係の負担を軽減する、あるいは転職を検討するなどが挙げられます。環境調整を行うことで、ストレスの原因そのものを改善することができます。
医師やカウンセラーと相談しながら実現可能な範囲で調整を行い、自身にとってより快適な環境作りをしていくことが大切です。
薬物療法
適応障害の症状の程度や経過に応じては、薬物療法がすすめられることもあります。抗うつ薬や抗不安薬などが症状の緩和に用いられる場合があります。
薬物療法は薬の服用により、ストレスによる過剰な不安感を和らげたり、気分を安定させたりする効果が期待できます。
ただし、薬の服用の際は副作用のリスクもあるため医師の指導のもと適切な量と期間で使用することが大切です。
精神療法
精神療法は、適応障害の治療において心のケアに重点を置く方法です。代表的なものには、認知行動療法やカウンセリングがあります。
認知行動療法では、ストレスに対する考え方や反応の仕方を見直し、より適応的な行動パターンを身につけることを目指します。
一方、カウンセリングでは、専門のカウンセラーが患者の話をじっくり聞き、心の整理や気持ちの軽減をサポートします。
精神療法は患者が自分自身を見つめ直し、ストレスとうまく向き合う力を養うための有効な手段とされています。
適応障害と診断された後の過ごし方
適応障害と診断された後は心身の回復を最優先に考えることが大切です。自分の状態を理解し無理のない範囲で生活を整えていくことが必要です。
適応障害と診断された後のより良い過ごし方を6つ紹介します。
- 十分な休息を取る
- ストレスがたまらない環境に身を置く
- 規則正しい生活を心がける
- リラックスできる趣味を楽しむ
- 適度な運動を取り入れる
- 公的な福祉制度に申請をする
それぞれの詳細を確認していきます。
十分な休息を取る
適応障害と診断された場合、心と身体の疲れが積み重なっている可能性があります。
適切な治療を進めるためには、まず十分な休息を確保することが重要です。過剰なストレスから距離を置くことで、自律神経を整え体内のリズムを正常に戻す助けになります。
心の休息の際は瞑想や深呼吸を取り入れることでもリラックス効果が期待できます。
ストレスがたまらない環境に身を置く
適応障害の原因となる環境要因を見直し、ストレスの少ない環境を作ることも大切です。
できる範囲で職場や人間関係の調整を行い、負担やプレッシャーを減らしましょう。
周囲の期待感や過剰な責任感に振り回されず、自分のペースで治療を進めることを尊重することがスムーズな回復につながります。
規則正しい生活を心がける
適応障害の症状緩和には、規則正しい生活を保つことも大切です。
毎日の起床時間や食事の時間を一定にする事で、体内時計が整い心身ともに安定しやすくなります。
また、決まった時間に外出して軽く日光を浴びたり体を動かす習慣もストレス軽減に効果的です。
リラックスできる趣味を楽しむ
適応障害の治療過程では、自分がリラックスできる趣味に時間を費やすのも大切です。
例えば読書、音楽、アート制作、園芸など、好きなことに没頭する時間を作ることで心に安らぎをもたらします。
趣味を通して達成感を得たり、自分だけの時間を楽しむことが気分転換にもつながります。他者と比較する必要のない趣味を選ぶことで、自己肯定感を高める効果も期待できます。
適度な運動を取り入れる
身体を無理なく動かすことも適応障害の治療においても多くのメリットがあります。軽いウォーキングやヨガなど、激しい運動でなくても気分や体調を改善するきっかけになります。
有酸素運動は心の緊張を和らげやすく、体内のストレスホルモンを減らす効果が期待できるためおすすめです。
外出が難しい場合は、室内でもできるストレッチや簡単なエクササイズを取り入れるのも良いでしょう。
公的な福祉制度に申請をする
適応障害で困難を感じる場合、公的な福祉制度を活用するのも一つのポイントです。
例えば、休職が必要になった場合は傷病手当金制度を利用することで経済的な負担を抑えることができます。
また、自治体や地域の相談窓口では医療費助成や生活支援に関するサポートを提供していることもあるため、適切なサポートを受けるために問い合わせてみましょう。
適応障害の治療の負担を抑えるためには自分ひとりで抱え込まず公的な支援に頼ることも重要です。
適応障害で申請できる福祉制度
適応障害を抱える方は日常生活や仕事に支障をきたすことが多く、生活面でのサポートが求められます。その際、日本ではいくつかの福祉制度を利用することができます。
傷病手当金制度や自立支援医療制度などの活用が可能で、これらの制度を知っておくことで経済的な負担を軽減することができます。
以下では、それぞれの制度について詳しく解説していきます。
傷病手当金制度
傷病手当金制度は、健康保険に加入している方が病気やケガで働けなくなり、給料を受け取ることができない場合に支給される制度です。
適応障害で仕事が困難になった場合もこの制度を利用することができます。支給額は、過去12ヶ月の標準報酬月額から計算され、最大で給与の2/3相当が支給されます。
申請するには、医師の診断書や会社の証明が必要となるため事前に準備を整えておくことが重要です。
この制度を活用することで、収入が途絶える不安を軽減し治療に専念できる環境を作ることができます。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、精神的な疾患の治療費を軽減するための制度です。
この制度を利用すれば、適応障害の治療にかかる費用(カウンセリング費用や処方箋薬など)の自己負担額が3分の1に抑えられます。
申請には、指定医療機関の医師による診断書や、所定の申請書類が必要です。
心身の回復を目指す上で非常に役立つ制度なので、ぜひ積極的に利用を検討してみてください。
適応障害と診断されやすい人の特徴
適応障害は個人の性格や考え方の傾向が疾患の発症に影響を及ぼすことがあります。ここでは、適応障害と診断されやすい性格的な特徴を紹介します。
- 完璧主義で几帳面な人
- ネガティブ思考な人
- 繊細な性格な人
- 真面目で責任感が強い人
それぞれ確認していきましょう。
完璧主義で几帳面な人
完璧主義で几帳面な人は、自分に対して高度な基準を設定しがちでそれを満たすことに強いプレッシャーを感じることがあります。
こうした性格傾向のある人は、小さなミスや他人からの批判に対して過剰に反応し、ストレスを溜め込みやす傾向にあります。その結果、適応障害に至るケースも少なくありません。
このような人はリラックスする方法を見つけ、必要に応じて心理的なサポートを受けることが重要です。
ネガティブ思考な人
普段から物事の悪い側面ばかりに目を向けがちな人はストレスを受けた際に症状を悪化させる思考のループに陥りやすいです。
また、ネガティブな思考は自己評価を下げたり、回復意欲を阻害するため、適応障害の改善にも悪影響を与えることがあります。
ネガティブ思考な人は一人で悩みを抱え込まずに周りの方とコミュニケーションをとることでネガティブな考えを抑えることができます。
繊細な性格な人
繊細な性格の人も適応障害のリスクが高いと言えます。繊細な性格の持ち主は、わずかなストレスにも過敏に反応しそれが蓄積することで心の負担が大きくなる傾向があります。
こうした性格の方は自分の感情やストレスのサインに早めに気づくことが大切です。
カウンセリングを通してストレス管理を身につけるようにしましょう。
真面目で責任感が強い人
真面目で責任感が強い人は、職場や家庭において他人の期待に応えようと無理をしてしまうことが多いです。
他人から信頼を得やすい一方で、自分自身のキャパシティーを超える負担を心に抱え込む原因にもなります。
真面目な性格ゆえに「誰かに相談するのは申し訳ない」と思いがちですが、一人で抱え込まずに適切なサポートを求めることも必要です。
適応障害を発症した人に見られる症状
適応障害は、ストレスとなる出来事や環境の変化により心身にさまざまな症状が現れます。大きな変化にうまく適応できないと生活面や仕事面に支障をきたすことが多くあります。
ここでは、適応障害を発症した人に見られる典型的な症状をいくつか挙げて紹介していきます。
- 夜寝られなくなる
- 笑顔が消える
- 朝起きられない
それぞれ確認していきます。
夜寝られなくなる
適応障害の主な症状の一つとして、夜眠れなくなることがよく見られます。
ストレスが募ることで、心が過剰に緊張した状態になり、脳が休むべき夜間にも活動を続けてしまうためです。
この結果、ベッドに横になっても考えごとが止まらず、なかなか眠りにつけない場合があります。
また、入眠ができても途中で目が覚めたり、浅い眠りが繰り返されたりすることもあります。このような睡眠不足は、さらなる心身の疲れを招き、悪循環に陥ることが少なくありません。
笑顔が消える
適応障害を発症すると、以前は楽しく感じていたことや自然に笑顔になれた場面でも、心から楽しむことが難しくなることがあります。
心のエネルギーが低下しているために感情を表現する余裕がなくなり、笑顔を作ることが減ってしまうのです。
また、不調を抱える自分自身に対する不安や罪悪感が背景にある場合も多いです。周囲の人からも「最近元気がない」「笑顔が減った」と気づかれやすい症状の一つです。
朝起きられない
適応障害の症状の一つとして、朝起きられないという問題も挙げられます。
心身共にエネルギーが枯渇してしまい、朝起きることすら大きな負担に感じられる状態となります。
特に、仕事や学校が原因のストレスで適応障害を発症している場合、それらに向き合うことが嫌で体が動かなくなることがあります。
このような状態が続くと日常生活のリズムが乱れ、ますます不調を悪化させてしまう恐れがあります。
適応障害に関するよくある質問
最後に適応障害に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 適応障害の治療期間の目安はどれくらいですか?
- 適応障害は自然に治りますか?
- 適応障害と診断されたら診断書はもらっておくべきですか?
適応障害に対する理解を深め、適切な対処ができるよう役立ててください。
適応障害の治療期間の目安はどれくらいですか?
適応障害の治療期間は、個人差があるものの、一般的には数ヶ月から半年程度が目安とされています。
ただし、ストレスとなる原因が解消されるかどうかや、カウンセリングや薬物療法といった適切な治療を受けているかによっても期間は異なります。
治療が早期に開始され環境調整が行われている場合は回復がスムーズになることが多いです。
一方で、原因となるストレスが継続している場合は治療が長引くこともあります。
適応障害は自然に治りますか?
適応障害は自然に改善する場合もありますが、それはストレスの原因が解消された場合に限ります。
適応障害は治療やサポートを受けずに放置すると、症状が長引いたり悪化したりするリスクがあります。
適切なケアを受けると症状の改善が早まるだけでなく再発のリスクも軽減できます。自身の状態に不安がある場合は、早めにクリニックを受診することをおすすめします。
適応障害と診断されたら診断書はもらっておくべきですか?
適応障害と診断された場合、診断書をもらっておくことをおすすめします。
診断書は、職場や学校での環境調整を依頼する際や、休職や休学をするための証明として役立ちます。
診断書をもらっておくことで、自分の状況を適切に説明できるため周囲の理解を得やすくなります。
適応障害の診断基準を理解してクリニックに相談しよう!
本記事では適応障害の診断基準やセルフチェックシートを紹介しました。適応障害の診断基準を理解しておくことで、早期にクリニックを受診することができます。
セルフチェックシートを確認して、少しでも「適応障害かも?」と感じた場合は、よりそいメンタルクリニックに相談してください。
医師が必要と判断した場合の診断書の即日発行に対応しているため、すぐに治療ができます。